12-A

かつて、アーバン・ミュラーは言いました。
お前は自分の力を信じていればいい。信じれば信じられた分だけ、それがお前の力となるのだ、と。
だから彼はそのことをを信じて疑わない。
今この瞬間に捧げる、たったそれだけの努力によって、どれほど世界が変わるのかを。

魔法チャオ女るるかるふうりん
「Transformation!」

ふうりんの手に握られたストレージデバイス。
その核となる石の周りに、今、G字型の金属が形成されていきます。
G字の頭の部分から、まるで触覚のように形成される2本の角。
ゴキ吉は紫の石と共に、Gの字の中央に収まります。
角の根本ががくんと開き、中からあふれんばかりの蒸気が噴出されます。

ふうりんの体を覆っていたシンプルなジャケットが、ゴキ吉オリジナルの物に上書きされ始めました。
胸に結ばれる巨大なリボン。
元々白を基調としていた服装に、ブルーのラインが入れられていきます。

くるりと杖を一回転させ、先端をウークに向けるふうりん。
きらりと光り輝くのは、ゴキ吉に入れられた一本の傷跡。
「Transformation has completed. Tell me incantations!」
ふうりんはゴキ吉の入った杖を掲げると、思い切り言い放ちました。
「Rocket Artillery!」
次の瞬間、ふうりんの目の前に放たれた弾が、すさまじい爆発を起こします。

「すごい・・・」
感嘆するふうりんに対し、自慢げな様子のゴキ吉。
しかしウークがそう簡単にやられているはずはありません。
「ふうりんさん!後ろ!」
ふうりんが振り向いたその場所に、猛烈に迫るウークの拳。
「Protection!」
ゴキ吉のバリアが辛うじてその身を守ったものの、ふうりんたちは壁際までその衝撃で吹き飛ばされます。

「何か、この状況を打破できるような魔法はないの?」
「Nothing.」
「・・・じゃあなんのための変身だったの!」
「Perform miracles!」

「・・・ようやく分かった。」
ウークが静かにつぶやいた言葉。ふうりんたちにもはっきりと聞きとれました。
「お前らとオレたちの間で、何が違うのかがよく分かった。それは決意だ。
 その場しのぎを繰り返すだけではない。ずっと昔から、オレたちの信念は変わっていない。
 オレたちは未来を見据える!そんな一瞬の奇跡に頼っているかぎり、オレたちは挫けたりしない。Brass generation!」
ウークが呪文を唱えるのと同時に、ウークの周りの床が不思議な色に輝き始めました。
まるで植物の成長を早送りにしているかのように何かが生えてきます。その光沢、金属です。
のっぺりと生えだした金属を、右手で握るウーク。
「まさか、あのときの!」

「Physical control!」
この呪文を唱えたのはゴキ吉でした。
ふうりんの体が中へと舞い上げられ、上空からその杖を思い切り打ち下ろします。
「Protection!」
ウークの出したバリアにもろに弾かれたゴキ吉、鈍い音を立てて地面に衝突します。
かろうじてその姿勢を支えながら、精一杯に、ゴキ吉を目の前のウークに対して構え直すふうりん。

ふうりんは理解していました。
ゴキ吉の決意が非常に固いこと、そしてそれを馬鹿にされたからこそゴキ吉があのような動きをしたのだと。
ならばふうりんがデバイスを振るう理由はただ一つ。
「Revolving cutter!」
ゴキ吉の一片から飛び出した刃とともに、ふうりんは勢いよく地面を蹴ります。
ウークに軽くよけられつつも、回転の勢いで回り込み、ウークの背後を確保するふうりん。

ふうりんとゴキ吉の特攻に応じて、味方のヒーローハシリチャオも行動を開始しました。
「Flame forth.」
強力な炎を身にまとい、その金属を溶かさんばかりの勢いで、ウークに攻撃を仕掛けます。
しかし、そんな両サイドからの攻撃にも、ウークは動じません。
「Protection-E!」
ウークの全面を囲うように、大きな球状のバリアが形成されました。
バリアの中にはあの金属までしっかりと確保されています。
ウークは前後からの攻撃が確かに防がれているのを確認すると、金属へ手をかけようとします。
ふうりんの声。

「Break throught!」
ガラスが割れるかのような音とともに、ウークのバリアが粉々に砕け散りました。
バリアの中に飛び込んでくるのはゴキ吉を構えたふうりんです。驚くウーク。
「Was it your original incantation?」
「そ、そうかも!」
ふうりんの体に、強烈な加速度がかけられました。

「Protection!」
今度は小さなバリアで身を守ろうとしたウークでしたが、そのバリアはゴキ吉によって破られます。
「Break through!」
「Revolving cutter!」

ウークはもはや、防御する術はありませんでした。
できるのはただ己の可能性を信じ、攻撃に転ずるのみ。
ウークの右手から、雷がほとばしります。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第319号
ページ番号
34 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日