09-A

ステーションスクエアに面する海。そして、そこにかかる一本の橋。
いつもなら自動車道として、美しい夜景のひとつとしてあるはずのその橋が、今や不良デバイスの魔力を受け、見るも無惨な姿にその形を変えています。
空を流れていくのは黒い雲。海面に沸き立つ波。強い風。
時折風を切るような音がなびくのは、橋の主塔の一本の回転により、周りの道路やケーブルを振り回しているためです。
一本の主塔につき、4本のケーブル。そしてその4本から垂れ幕のように、海面に垂直ないくつものケーブル。
遠心力も伴って、ぶつかったらひとたまりもありません。

「あのチャオを狙うぞ!」
ふうりんへと届く、レビンの指示。
デバイスの保持するエネルギーは有限です。ならば時間を経たせ、デバイスがある程度落ち着いたところで確保した方が、管理局側にとっては有利。
目の前のエルファを狙えというレビンの指示は理に適った物でした。

ふうりんは行動を開始します。杖を構え、まっすぐに、眼前のエルファを狙います。
「Shooting!」
空を切るふうりんの弾。
軌道は読まれていました。見上げるとエルファは、既にふうりんの真上に位置しています。
エルファはデバイスを短剣の形に変形させます。
「Dagger mode!」
「Revolving cutter!」
エルファの短剣とふうりんの刃。2つが空中で接触し、互いに弾き合いました。

エルファの後方から、レビンが飛来します。
「挟み撃ちにするぞ!」
エルファの前方をふうりんが、背後をレビンが、それぞれ押さえます。
レビンの構えるのは、かぎ爪風に変形させたデバイス。
中央のエルファは、短剣を2つに分離させると両手に持ち、両者からの攻撃に備えます。

「たぁっ!」
先に動いたのは、レビンでした。
かぎ爪が向かったそのところを、エルファは片手の短剣で受け止めます。
しかし、そこでにやりと笑うレビン。彼のもう片方の手には充填された弾丸が。
正面からは、ふうりんも杖を構え、狙いを定めています。
「Shooting!」
「Reflect.」
2人が同時にそれらを放つ時、エルファは呪文を唱えました。

ガキンと金属音がして、ふうりんの放った弾が跳ね返されます。
が、その魔法が効いたのは、ふうりんの弾のみ。
エルファはレビンからの弾を受け、海面に向かって突き落とされていきました。
「Fast move.」
ふうりんは、跳ね返ってきた弾を回避します。
しかし、突き落とされながらも、エルファの標的はふうりんにありました。
「Bind down.」

反射した弾を避けた矢先、無防備なふうりんに、エルファの束縛魔法は完璧に決まりました。
身動きが封じられたふうりんは羽ばたくこともできず、海に向けて落下していきます。
そこを貫く一本の矢。放ったのは、海水面ぎりぎりで何とか体制を保ったエルファ。
エルファはデバイスの形状を元に戻すと、即座に新たな魔法をかけ始めます。
「Psychological・・・」
「ええい、Protection!」
しかし動きが速かったのは、レビンの方でした。

レビンはふうりんごとバリアで包み込み、その束縛を解き放ちます。
「て、てっきりやられてしまう物かと・・・」
ふうりんの服には、矢がすぐ側を通った時の淡い傷跡が残されていました。
「それはよかった。というか、ベッキーが来たよ。」
言われて、ふうりんもレビンの見ている方向に目を向けます。

ダイクストラが、2人の元まで飛んできました。




エルファはその間に、天高く翼を広げ飛び上がります。
例の主塔は既に幾分か動きを弱め、近づきやすそうになっていました。
飛び交うケーブルのスピードも、何とか避けられそうな範疇です。
エルファは主塔に向かって接近を試み始めます。

ふうりんらもその動きに気付きました。
「Fast move.」
3人もエルファを追い、飛んでいきます。ケーブルの飛び交う主塔の周囲へと。

数秒に一度、横からやってくるケーブルが彼らの動きを妨げます。
折れた道路がふうりん達の目の下を横切っていきます。
そんな中、もっとも動きが俊敏であったのはレビン。魔法を効果的に使い、ケーブルをテンポよくかわしていました。
「オレが先回りする!」
レビンの言葉に、ふうりんとダイクストラはうなずきました。

ダイクストラは前方エルファの妨害を狙います。杖で狙いを定め、一言。
「Shooting.」
追っ手の動きに気付いたエルファは、直前にバリアを張りました。
「Protection.」
弾は防がれました。しかし、容赦ないケーブルが、バリアを外側から直接叩きます。
バリアの予期せぬ運動に、バランスを崩すエルファ。
そこに追いついたレビンが、真上からかぎ爪と共にエルファのバリアを掻き破ります。
「Bind down.」
「Escape!」
エルファは一瞬高度を失いながらも、姿勢を取り戻し、短剣を構えます。

「Shooting!」
レビンとエルファとの間を、またも一発の弾が駆け抜けていきました。
見るとふうりんとダイクストラの2人も、エルファに十分に接近しています。
エルファ嬢の背後を確保するふうりん。

囲まれました。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第315号
ページ番号
25 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日