08-C

不良デバイスを掴むヒーローチャオ。
そのまま逃げようとします。が、しかし、そうは問屋が卸しません。
黒いチャオの背後からやってきた、もう一匹のチャオによる射撃。
「Protection.」

そのチャオはよく見ると、彼女―エルファにとって見覚えのあるチャオでした。
幾度となく不良デバイスを集める場面に現れた敵、そして昨日には、友達になりたいといってきた仲間？

エルファはふうりんのデバイスが、ゴキ吉でないことに気付きました。
そう言えば、その服装も、以前とは少し異なっているような気もします。別人でしょうか。
俄然そのチャオのことが気になってくるエルファ。しかし同時に、彼女には目的がありました。
余計なことを考えていられる状況ではありません。逃げの体制へ。
彼女は片手にデバイスを、周囲にバリアを張ったまま、杖を取り出します。
「Pier・・・」

しかし唐突に、目の前にいた黒チャオが、杖を振りかぶりました。
「させるか！Claw Mode.」
かぎ爪状に変形した杖と共に、エルファ嬢のバリアを掻っ切ります。
そこにすかさず、杖を向けるふうりん。
「Shooting!」
放たれた弾はエルファの手を打ち、彼女は思わず、掴んだデバイスを手放してしまいます。
弧を描き、飛んでいくデバイス。

「Fast move.」
デバイスに向けて加速を始めるレビンを尻目に、エルファはふうりんに対しまっすぐに向かっていました。
「Attracting, and pike mode.」
延長されたエルファのデバイスの先端が、ふうりんの目の前に突き出されます。
身動きの取れないふうりん。ふうりんは観念しましたが、

「ひょっとして、以前どこかで会ってます・・・か？」
聞かれて、ふうりんは驚きました。
この状況でそんな言葉が聞けるとは。エルファ自身も、そんな言葉が出たことに。
「はい。」
2人の間を、不思議な静寂が包みました。


そのとき遠方から、レビンの声が聞こえました。
「Calling! 結界を張って！今すぐ！」

ふうりん、エルファ、そしてレビンの視界が、一気に揺らぎました。
同時にふうりんは、あの木と戦った日と同じ結界が張られるのを感じました。




「な、なんだお前は！」
ダイクストラは目の前に現れたヒーローノーマルのチャオを見て驚きました。
そのヒーローチャオはダイクストラは見ると、にやりと笑います。
「このデバイスは、俺の物なのさ。」
そう言うやいなや、彼の杖から放たれる雷。

ダイクストラは羽ばたき後ろに飛び退いて、その攻撃をかわします。
「チッ、外したか。まあいい。」
そう言いつつもヒーローチャオは、傍らの不良デバイスを確保しています。
「これにておさらばさせてもらうよ。」

逃げられてはまずいと、ダイクストラは、素早く杖を回転させ、柄の部分をヒーローチャオの右手へ。
しかしその杖は、ヒーローチャオの左手によって、受け止められていました。
見ると彼は自らの杖を手放し、海中に落としていながら、しかしその表情には余裕さえ見て取れます。
驚くダイクストラ。

「Fast move.」
間合いを詰めようとしたダイクストラの体が、予期せぬところで宙を舞います。
ヒーローチャオがダイクストラの体を蹴ったのです。
ダイクストラの杖をもぎ取ったヒーローチャオは、一言。
「Attracting.」
即座に海中から戻ってくる、ヒーローチャオの杖。
彼はその杖を握ると、ダイクストラの杖を、海へと投げ捨てました。

「Thunder.」
直前で防御行動をとるダイクストラ。
瞬間、爆音と共にダイクストラの体は、大きく吹き飛ばされてしまいます。

自分の杖を拾うヒーローチャオ。地面に素早く円を描くと、異世界への穴を開き、素早くその中に飛び込んでいきます。
ダイクストラはただただ歯を食いしばって、その姿を目に焼き付けました。




ふうりんの目に飛び込んできたのは、大きくうねる架橋の姿でした。
「まさか橋にまで寄生するなんて思わねーよ！」
レビンが驚きの声を上げている間にも、エルファは翼を広げ、その現場へと向かいます。
慌てて追いかける始めるふうりん。

どうやらデバイスは、正確には、橋を支える主塔に取り憑いてしまったようです。
主塔の一本が回転を初め、そのまわりの道路、そしてケーブルが、ひどい音を立てて崩れ落ちていきます。
道路からは車が10台20台、次々に振り落とされていきます。
これが実際に起こっていたら、どれだけ恐ろしかったことか。
ふうりんは、レビンの行動の早さに感心しました。

エルファはその主塔の手前まで来て、一旦飛行を停止しました。
「近づけませんね・・・」
ふうりんには、エルファの呟きが聞き取れます。
彼女の言葉通り、橋の主塔はますます回転を速めていました。
ちぎれたケーブルが鞭のように宙を舞い、とても近づけそうにありません。