06-C

「なんだそりゃ」
突き出された鳥かごにわけが分からないといった風に、大げさに肩をすくめるウーク。
それに対してエルファ嬢は、記憶を辿りながら答えます。

「フェレット・・・のようです。いや、正確に言えばチャオですか。言葉を話していますから。」
「それで、そのフェレットは・・・一体何なんだ?」
「実は私とは別に、デバイスを回収しているチャオがいるんです。
 その仲間のフェレットだと思います。一応捕まえておいたんですが・・・」

エルファはウークに、今まで何度かピュアチャオと共に行動する、フェレットを見たこと、
何度かデバイスを奪われそうになったことなどを伝えました。

「ふーん、なるほどね。確かに不良デバイスをそのまま置いていると危険だから、
 管理局辺りから回収班が来るのはうなずける。」
そう言いながら、ウークは深くうなずきました。

「それで、このフェレット、どうしましょう?」

かごに入れられたグレアムは、そのかごの中で、激しく暴れていました。
なにやら声を上げながら、鉄でできた檻を掴んで揺すり、外へ出ようとしています。
するとかごは大きく揺れて、つられて乗り物酔いになったグレアムは、ぐったりとその場に横たわりました。

「部外者のチャオは邪魔にしかならない。かといって手を出すのも行き過ぎだから・・・
 うーん、とりあえずそのままにしておけばいいんじゃないだろうか。」
「分かりました。」

そのとき、エルファの部屋の窓の方から、こつんこつんと音が聞こえてきました。
何か小さいものが、窓にぶつかっているかのようです。

「あれ・・・?ちょっと待って下さい。」
エルファはウークにそれだけ言うと、杖を手に取り、窓際まで歩み寄ってカーテンを開きます。
カーテンを開けられた窓からは、日光がさんさんと、室内にこぼれ込みます。
あまりの眩しさに、思わず目を閉じるエルファ。

目を慣らしてから窓の外を見ると、そこにいたのは―
宙に浮いた赤い石。紛れもない、ゴキ吉です。
エルファは杖を片手に、警戒しながら、ゆっくりと窓を開けます。
それに応じて、ゴキ吉はその窓の隙間からふわふわと入ってくると、エルファを見るやいなや、挨拶しました。
「Hello!」
突然人の家にやってきた怪しいデバイスを見て、言葉もないエルファ。

ゴキ吉は勝手に部屋の奥に進むと、ややっとグレアムの入った鳥かごを見つけました。
「W-What? What are you doing, Graham?」
乗り物酔いで倒れているグレアムに、ゴキ吉が驚きの声を上げます。
「Why are you in a cage? Did you?」
ゴキ吉が振り返ると、そこにいるのは、エルファ。

「そういえば、このデバイスはもしや、あのチャオが持っていた・・・」
「そ、そうです」
鳥かごの中から、今にも吐きそうなグレアムの声が聞こえます。
「僕たちは別に、悪気があってここまで来たわけじゃありません。
 ただ、あなたのことが気になって、お友達になろうと思って、ついてきただけなんです。」
「Me too.」
「・・・」
どこかの不審者のような台詞を言われ、エルファは戸惑います。

「ご存じだとは思いますが、僕たちもデバイスを集めています。
 今はお互いに牽制し合っていますけど、もしかしたら、協力できるかもしれない。
 そう思ってここまで来たんです。
 あ、申し遅れましたが、僕はグレアムといいます。よろしく。」
「I'm Gokikichi. Nice to meet you.」

エルファは、困った顔で返します。
「私はエルファ。ですが、お友達になれるかといわれると・・・」
「なれないんですか?」
グレアムの言葉に、エルファは曖昧な笑みを浮かべます。

そのとき床に空いた黒い穴から、一筋の電撃がゴキ吉に向けて落とされました。
見れば、そこにはあのウークが、杖を持って立っています。

「正常なデバイスでもきちんと処理すれば、魔力の供給源となりうる。
 一個でも多く、デバイスを集めよう。」

雷を受けたゴキ吉の表面に、ぴしりと亀裂が入ります。
ゴキ吉は力を失ったかのように、コロコロと床に転がります。

唖然とするグレアムに、ウークからの声が聞こえます。
「わざわざ手助けしてもらわずとも、我々はデバイスを回収することはできるんだ。
 だから、そんなデバイスが生きていようと、我々の役に立つことはないだろうさ。
 この理屈が分かるかい?」

しかしそれでも、ゴキ吉は力をとどめていました。
ゴトリ、と、軽く音を立てて、弱々しくも、宙へと浮かび上がります。
ウークはそれを一瞥し、再度杖を振り上げようとします。

「やるんですか?」
それを制すのは、エルファ。
ウークがうなずいた次の瞬間、向こうの世界とこちらの世界を繋いでいた穴は、
まるで空気を抜くかのように縮み、そして消えて無くなります。
エルファが杖を振るったのです。

「ゴキ吉は逃げた方がいいと思いますよ。話は後で付けておきますから」
「Thanks.」
ゴキ吉はそう言い残すと、ふらふらと窓を出て行きます。

グレアムは、自分にもそう言われることを期待して、鳥かごの中からエルファの顔を見上げました。
しかし彼は、すぐにそんな期待を捨てました。
グレアムには、エルファに何か考えがあるように見えました。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第312号
ページ番号
18 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日