04-C

「え、いや、あっと、その・・・」
ふうりんの今の格好は、白いひらひらした服に、赤いリボン。手にはゴキ吉杖。

当惑するふうりんに、セティはますます、その目を光らせます。
「その手に持っている杖は何かしら?
 まさか・・・まさかふうりんがコスプレイヤーだったなんて・・・」
「違います!」
コスプレイヤーであることは否定できても、怪しい格好をしていることは否定しようがありません。
どうすればいいのか迷うふうりんを助けたのは、ゴキ吉でした。

「Nice to meet you, ma'am.」
「えっ、今のは、誰の声?」
聞き慣れない声に驚くセティ。当然、ふうりんも。
「シッ、ゴキ吉!喋っちゃダメでしょ」
「Don't worry. Let me talk to her.」
「ゴキ吉?」
どうやら、もう隠し通すわけにはいかなさそうです。
黙ったまま、手に握った杖の先端を彼女に向けるふうりん。


一通りの説明ののち、彼女はうなずきました。

「ふーん、魔法少女ならぬ魔法チャオ女、ってわけね。」
ふうりんの魔法チャオ女業は、こうして、あっけなくバラされてしまいました。




「ということは、ふうりんが今日遅刻したのも、それが原因というわけ」
「はい・・・」
ふうりんは変身をといて、彼女に向き合っています。
一応、ゴキ吉も。

「それで今夜、この部屋で一体何をしていたの?」
「それが窓の外から突然、今夜いただいた青い石―デバイスを狙うチャオが現れたんです。結局奪われてしまいましたが・・・」
目を伏せるふうりん。

「それにしても、あの青い石にそんな背景があったなんて知らなかったわ・・・。ちゃんと言ってくれればいいのに。」
その台詞に、ふうりんは首を横に振ります。
「言えるわけ無いじゃないですか。日頃変な格好をしながら魔法チャオ女をやっているなんて・・・
 部長も、だれにも言わないで下さいよ?」
「わかったわかった。」
渋々といった感じにうなずくセティ。

「それにしても、その狙っていたというチャオに、心当たりはないの?」
聞かれて、首をかしげるふうりん。
「あの大きな羽はヒーローヒコウ、それもヒコウに二次進化したものじゃないかと思っているんですが・・・」
「HFF・・・エルファ・クローディア・・・」
「なんですか?」
「ちょっと待って。」
唐突にそう言い残すと、セティは立ち上がって部屋を出て行きます。


戻ってきたのは数分後。手には、巨大なファイルを抱えていました。
髪の毛をかき上げながらファイルを開き、ふうりんに見せるのは、一枚のチャオの写真。
それはまさしく、HFFのチャオでした。

「このチャオが、エルファ・クローディア。一度は聞いたことがあるかもしれない。
 3代目編集長のパートナーとして、一線を担っていたことで有名なチャオよ。
 事の起こりは昨年の9月頭、エルファのパートナーが行方不明になったの。
 あなたはまだ、そのとき入社していなかったんだっけ。」
うなずくふうりん。

「その後後を追うようにエルファ・クローディアも行方知れずとなる。
 この件はあまり表向きには公表されず、その状況は現在まで続いてるわ。
 行方知れずとなった事はこれまでに何度かあった上、主要部門以外の規模縮小、再編成を急いでいた編集部は
 この件を表向きにするでもなく、逆に言えば、決して強く隠しているわけでもないんだけれど。
 メディアにもあまり取り沙汰されないまま、今日に至っているわ。」

「何度か行方知れずになってるんですか・・・」
ふうりんのつぶやきに、彼女はうなずきます。

「けれど、なんの予告もなく消えたのは、本当に数えるほどよ。
 でも、今回は何か違う気がする・・・前々から何となく思っていたことなんだけど、ふうりんの話で確信が持てたわ。
 去る時か帰る時、彼らは必ず何か痕跡を残していた。でも、この最後の事件では、何も残されていないわ。
 それに、さっきのふうりんの話、彼らの目的はどう考えても、無難に帰ってくることじゃない。
 あくまで推測でしかないんだけどね。」
彼女はここでファイルを閉じると、大きく深呼吸しました。


「本当にさっきのが、このエルファ嬢なんですか?」
ふうりんの疑問に、彼女が答えます。
「分からないわ。でもここは週刊チャオ編集部だから、その確率はかなり高いと言っていい。
 もちろん、別のチャオである可能性は否定できないけれど。」
「そうですか・・・」

部屋にかかった時計を見るふうりん。
時計はもう1時過ぎを指しています。
セティが立ち上がります。

「ずいぶん長話になってしまったわね。とりあえず、ふうりん、今日はここで解散としましょうか」
「えっ、ですが・・・」
「心配ないわ。それに魔法チャオ女たるもの、しっかりと休養を取らないといけないものよ。」
「は、はあ・・・」





帰宅後。

ふうりんが家に帰ると、グレアムと千晶の二人は、既にぐっすりと寝ていました。
ゴキ吉をタンスの中に戻し、一人、窓辺に歩み寄ります。

突然登場した、天使の羽を持つヒーローチャオ。
ゴキ吉やグレアムと出会ってから数日、不良デバイスとの戦闘には幾分か慣れてきたつもりでした。
ですが、チャオとは・・・

ふうりんには、再びぶつかり合うような気がしてならなかったのです。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第307号
ページ番号
12 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日