03-B

まだ2回目の魔法戦、それでいて前回よりも格段に激しい相手からの攻撃に、ふうりんは少し当惑していました。
「えっと、相手の魔力を消耗させればいいんだよね」

ふうりんは地面近くまで急降下すると、まっすぐにその幹にむかって狙いを定めます。
「モードチェンジ!」
ゴキ吉を大きく頭上に掲げるふうりん。直線的なフォルムに変形するゴキ吉。
「Searching for the source...」

そのとき、ふうりん達の真下から、新たな根が突き出てきました。
「きゃっ」
「Stop seaching. Set back for stadard mode.」
バランスを崩した2人に、追い打ちをかけるように、もう一本の根が彼らに向かって振り下ろされます。

「ゴキ吉、飛んで!」
言うやいなや、巻き起こる風とともに根を避けると、上空へまた舞い戻る2人。
しかしじっとしてはいられません。木の幹から今度は光線放たれると、それがふうりん達にまっすぐ飛んできます。
「Protection!」
ゴキ吉のバリアに光線が衝突した瞬間、光線が爆発します。
「あっ!?」
その勢いで、後方に大きく吹き飛ばされるふうりん。
飛ばされながらなんとか体勢を立て直したものの、街路樹との距離は、大きく開いてしまいます。

これだけ突き放せば、もう攻撃できないと思われたのでしょう。
宙をうごめいていた木々の根は動きを休めてしまいました。

その様子をビルの上から眺めていたグレアムはつぶやきます。
「あのデバイス、不完全とはいえ、かなり安定してる。
 ふうりん、ほんとに大丈夫なのかな・・・」


ふうりんは、もろに体力を消耗していました。息も上がります。
敵の近くでは光線と木の根が同時に襲ってきました。とても勝ち目があるようには思えません。
とすると、遠距離攻撃・・・
不良デバイスが使うのも、普通のデバイスが使うのも同じ魔法なのだとしたら、ゴキ吉にもそれが出来るはずです。

「ゴキ吉、遠距離攻撃ってど」
「OK. Set shooting mode please.」
ゴキ吉はふうりんの言葉を奪うと、まだまだ余裕というように、その石の中に奇妙な文字列を表示します。
「 :-) 」

ゴキ吉の周りを取り囲んでいたGのマークが形を変え、今度はUの字のように組み直されました。
変形が終わったゴキ吉を、まっすぐに例の木の方へと向けるふうりん。
ゴキ吉の先端に光が集まり、球形の弾丸が形成されていきます。

そして、発射。
ふうりんはそれを追って、街路樹へ向かってまた加速していきます。


根を垂らした街路樹は、隙だらけでした。
そんな街路樹の枝の一本に、もろに直撃する弾丸。
続いて飛んできたふうりんも、あらかじめ仕込んでおいてもう一つの弾を、至近距離で打ち込みます。
見事に幹の真ん中をくりぬく弾。

街路樹はうめき声を上げて、大きくその体をよじり始めました。
途端に、周りで静かに垂れ下がっていた根や枝が激しく踊りだします。

街路樹の周囲の地面から、次々と根が張りだしてきました。
数えきれないほどの根は、幹とふうりんを円形に囲うように、大きくせり上がって包囲します。

「まだ余力があるなんて・・・」
つぶやくふうりんに向かって、周りを取り囲んだ根が大きく波打ち、一斉に攻撃を開始しました。
その先端はまるでドリルの如く、鋭く尖っています。串刺しにする気です。
「Protection!」
ゴキ吉を中心に形成された球状のバリアが、それらの根を受け止めます。

しかしこの一斉攻撃には、さすがのバリアも長くは持ちません。
どうしようもないふうりんに、根はバリアごとふうりんの周りを絡め取り、身動きを封じます。
そして木の幹からの光線。このままでは、前回と同じパターン。

そう感じたふうりんは、素早くバリアを解きました。
「Revolving cutter」
ゴキ吉の先から刃物が飛び出し、それがバリアを囲っていた根を、回転とともに一気にかき切ります。
その動きで、光線をかわすふうりん。ひらめく衣服。
不意を突かれた街路樹を睨むと、そのまま攻撃に転じます。
「Fast move」


相手の攻撃パターンは読めました。
敵は根を振るうこと、そして光線を放つことしかできません。
それが分かれば、こっちのもの。先程の
ふうりんはかなり疲れていましたが、再度ゴキ吉を振り上げると、ゴキ吉に新たな弾を溜め始めます。

街路樹の方も、このままではダメだと思ったのでしょう。
その木は、一瞬震えたかと思うと、茂っていた木の葉を徐々に落とし始めました。
木の葉は風に舞い、ふうりんの目をくらまします。しかし、ふうりんは動揺しません。

「Shooting!」
木の幹に向けて、ふうりんは最後の光の弾を放ちました。
それは木の葉を蹴散らしながら、まっすぐに木の根元へと向かって飛んでいきます。
ふうりんもその後を追って、木の葉の間に空いた穴をくぐり、敵の懐へと飛び込みます。

四方からむち打たれる根の数々。
「Revolving cutter」
ふうりんはそれらを切り裂いて、ゴキ吉を変形させます。
相手の魔力を奪い取る、直線的なフォームへ。

「Searching for the source... It's ready!」
ゴキ吉から放たれた液状のものが木の根元を包み込むやいなや、振りかぶった根の動きが、急に弱まりました。
そして数秒後、街路樹は完全にその機能を停止します。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第305号
ページ番号
8 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日