01-C

ふうりんの手の中の赤い石が、突如その色に光り始めたのです。
その光り方は、尋常ではありません。石から天へ光の柱が立ち、その柱から四方へ、
さらに光があふれているのです。
ふうりんが驚いたのもつかの間、先程フェレットが出来てきた茂みの奥からも、
どす黒い光があふれ出てきたかと思ったら、その光の中から飛び出してきたのは、黒い影。
黒い影自身も、内側に不穏な光をたたえています。

赤い石の光があまりに目立っていたためか、黒い影の目は、ふうりんの方を捉えました。
ふうりんがその視線から殺気を感じる、と同時に、赤い石の光、黒い影の光は消滅します。
ふうりんに襲いかかる黒い影。ふうりんは慌てて姿勢を横にし転がって、その影をかわします。
そしてベンチの下に転がり込み、じっと相手の様子をうかがいます。

黒い影はベンチを飛び越したまま、後ろにあった電灯にぶつかって、べちゃりと潰れてしまったようでした。
その様子を見て、少し安心するふうりん。と、後ろから、そのふうりんに声をかけるものがいます。
「早く、ゴキ吉を!」
「はい?」


ふうりんが声の主を捜すと、それは先程の傷ついたフェレット。
フェレットが話しかけていることに驚く間もなく、それは矢継ぎ早にふうりんに命令します。
「とりあえずゴキ吉、あの赤い宝石を出して!」
「な、なんで!?」
とりあえず右手にあの赤い石を示すふうりん。

フェレットは話を続けます。
「ごめん。よく聞いて。お願いがある。あの黒い影を倒すのに、協力して欲しいんだ。
 迷惑だとは分かってる。けれど僕は見ての通りの傷だらけで・・・僕が力を貸すから、あいつを倒して!」
「え、ど、どういう意味?それはちょっと・・・」
「大丈夫。君はこの世界のチャオだよね。それなら、その赤い宝石、ゴキ吉が使えるはずなんだ。
 僕の言う通りにして。いいかい?」
「え・・・ええと、よくわからないけど、とりあえずは・・・」
ふうりんがうなずくとともに、黒い影からは、盛んに低いうめき声が轟きました。

「急がないとまずいな・・・よし。じゃあ、僕のこれから言うことを、そのままゴキ吉に言って。
 じゃあ、言うよ。『ルルカル・マジカル』」
「るるかる・・・まじかる?」
言葉が終わるやいなや、赤い石、ゴキ吉はまた光を帯び始めました。ただし先程の光り方とは違います。
その光りはそう、ふうりんを包み込むように。

「Are you ready?」
その言葉は、ゴキ吉から聞こえてきます。
「何か答えて!」
「えっ、あっ、うん」
突然の展開に、しどろもどろなふうりん。

しかしそれでも、最後の「うん」が通じたのでしょう。
ふうりんとゴキ吉は、光に包まれたまま上方向へ移動します。たまたまふうりんの上にあったベンチを突き飛ばして。
「OK. OK. Don't worry. All right!」
よく分からないことをつぶやきながら、ある程度の高さに浮かんだゴキ吉と、ふうりん。

ふうりんの目の前には、先程の黒い影がくっついた電灯がまざまざと見えます。
黒い影はまたも低いうなり声を上げて、今度はどんどん小さくなっていきます。
「まずい!」
フェレットの言葉。
「あいつ、電灯のエネルギーを利用して暴れ回るつもりだ!」

「やぁふぅーーーー!!!!」
叫び声を上げたのは、ゴキ吉でした。
その雄叫びと同時に、ゴキ吉の周りを囲む形で金色の枠が形成されていきます。その形はG。
枠の一点に穴が空き、そこからピンクの棒が突きだしてきます。

そうして杖のような形になったゴキ吉は、ふうりんの手にすっぽり収まります。
わけの分からないふうりんに、地上からのフェレットの言葉。

「変身して!」
「Of course I do. Could you be quiet?」
当惑しっぱなしのふうりんの代わりにゴキ吉が答えると、即座にふうりんの体の回りが白色に輝き始めます。
自然と目が閉じるふうりん。
その体の周りを、フリル付きの白いスカートが取り囲み、青のラインのカーディガンを羽織ります。
襟元から飛び出した大きな赤リボンは、結ばれ、ふうりんの体は回転を始めます。
そして空中で宙返りをしたのち、地面に優雅に着地しました。

「The transformation has completely finished.」
ゴキ吉の声で、ふうりんはようやく自分の状況に気が付きました。
「な、何この格好!?」
「OK. OK. Don't worry!」

見れば目の前の電灯に張り付いていた黒い影は、既にその姿を消しています。
その代わりに動き出したのは、電灯そのものでした。

「え、えーと、冷静になるんだ私」
落ち着くために、とりあえず状況を把握しようとするふうりん。
しかし、その猶予はないようでした。
「来ます!」

電灯の頭の部分が大きく曲がり、そのままふうりんに向かって大きく振り下ろされます。
よける間もないまま、しかし
「Protection」
ふうりんの手の杖の先端、赤い宝石の部分から大きなバリアが生成され、盾となって電灯を受け止めていました。

続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第302号
ページ番号
3 / 43
この作品について
タイトル
魔法チャオ女るるかるふうりん
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第302号
最終掲載
週刊チャオ第321号兼ライトカオス記念号
連載期間
約4ヵ月13日