partA
Hは何かと最近不機嫌だった。
どうもDとはいさかいが絶えないらしい。
喧嘩をするほど仲が良い・・・とは言えないようだ。
そして、性懲りもなくDがまた何か事件を引っ張り出してきた。
そう、Dはただの貧乏くさいオカルト学者なのだが、
どっかの薬で小学生にされた某漫画にはまったらしく、
研究そっちのけで探偵をしている。
Hはたまたま家賃を払えず追い出されそうになっているところを、
Dが雇うという形でHを無理矢理つれてきたのだった。
―おいおい、今回の事件はすごいぞ!
Dはダークのくせにやけに目を輝かしてHに近づいた。
Hはすぅっとそれをかわしながら言った。
―事件にすごいとかそう言うのは関係ないでしょ。
―いや、今回はネットで活躍するHN「スマッシュ」の、
「和田 須磨」が殺害されたんだ!
Dがそう言った瞬間、Hはすごい形相をして聞いた。
・・・ヒーローとは言えない顔なのだが。
―マジで?
―そうだ。そして、その彼の自宅が近所なんだよ。
ほら、この道沿いのあの赤い屋根の家だ。
―へぇ、そんな近いところにいたなんてねぇ。
プライベートはあまり顔を出さなかったからかな。
友達とこの道は良く通るんだけどね。
―じゃ、行くか。
―そうだね・・・あれ?
そして、結局、
Hは、Dとまたもや捜査に加わることになったのだった。
土曜サスペンスD&H 「和田 須磨殺人事件」
―こんちわーっす。
須磨の家は割と立派な作りだった。
しかし、今日だけはその家も不気味に感じられた。
そして、この元気よく声をかけてきたのは、
警察内では良く「ふゆきさん」と呼ばれている若手、
「冬木野 浩志」刑事だ。
―Dさん。いつもお世話になってますよ。
まぁ毒舌になったのはそっちのチャオのおかげなんっすけど。
―あら、ふゆきさん、それはひどいですねぇ。
Hはぽきぽきとしながら彼に近づくが、
結局は猫パンチしかチャオという生き物は出来ないのだった。
浩志はそれを全部知っていたのか、
にやにやしながらHを見下ろしていた。
―で、ふゆきさん、一応容疑者というものを教えてもらおう。
―あぁ、容疑者ね、これがリスト。
・某名 草一 (ぼうな そういち) 通称・「ぼー」
須磨とは長い友人だった。
しかし、須磨とは対照的に小説はあまりうけずに、
パチプロで年間ものすごい額を稼ぐという、
最初とは違う人生を歩んでいる。
・タクヤ・トルド・デラックス 通称・「DX」
須磨のマネージャーだった。
しかし、去年くらいに解雇され今は無職。
・和田 棒次(わだ ぼうじ) 通称・「ろっど」
須磨の弟。
しかし、兄弟は昔から仲が悪く、
第一通報者もこの棒次だった。
いまは、和田家の会社の社長をしている。
―なるほど、で、死亡推定時刻はいつ?
―昨日の夕方頃だと考えられるね。
そして、その時間には全員アリバイがないんだ。
―どこで殺されていたんだ?
―この家の前だ。どうやら刺殺らしいけどさ。
そして、夜中に帰ってきた棒次が倒れている須磨を発見。
Dは「だいたいは分かった」と手を浩志に仰いだ。
浩志は「はいはい」と話をストップさせた。
そして、彼は3枚の写真をDに渡した。
―これが、3人の顔写真なんだ。
―うわぁ・・・なんか全員似ている顔だなぁ。
D、誰が誰だか分かる?
―いや、全然見当も付かない・・・。
DとHが苦戦していると、浩志はさらに、
一枚の袋に入っている紙を渡してきた。
「スマッシュヲタク へ
スマッシュヤ 須磨ヲコロシ スマッシュナッタ」
DとHは顔を見合わせた。
そして、さっきよりも大きなため息をついたのだった。