part1・A 「消えたチャオ」 

安っぽい車のなかで二匹のチャオが話していた。
「全く。もっと遊びたかったのに・・・。」
「まぁ、そう言うのは無しにしようか。
 どうせ、会うことになったんだろうから。」
「はぁ?なんであんたみたいな奴と出会う運命・・・。」
「ま、感謝してくれ。俺は恩人なんだから。

話は2時間前くらいにさかのぼる。
ある路地に泳ぎタイプなのだろうか、
後ろに角を長く伸ばしてフードをかぶって歩いていた、
ダーク系のチャオがいた。Dである。

Dは一言で言うと水泳が得意な「自称」次世代科学者である。
そして、論文発表をたまにする。
しかし、論文をまじめに聞いているのは一匹もいない。

で、その時も、その雑文を、
誰も聞いていないのにさんざんぶちまけて、帰っていた。
すると、何やらぼろアパートから、
女のチャオとおばさんチャオがいがみ合っていた。

「あのねぇ、いつも遊び回っているのは勝手だけど、
 アパートの賃貸料は払って欲しいんだけど。」
「分かっているわよ。仕事が見つかったら返していくからさ。」
「その言葉を聞くのはもう飽きたんですけど。
 なんかの仕事を手伝うくらいしたらどうなのよ。助手とか。」

二人の会話を聞いて、ふと「助手」という言葉が耳に入った。
あぁ、そう言えば助手がいなかったな・・・。
そう思ったDはその二人の所に近寄っていった。

「すいません。何を話しているのですか?」
「は?」

さっきまでいがみ合っていたくせに、声の調子を合わせて、
Dの方を向いた。
当たり前だと言えばそうだろう、初対面なのだから。

「貴方誰?」
女のチャオが聞いてくる。どうやら飛行タイプのヒーローらしい。
「あぁ、俺はOO研究所の科学者のDです。」
「OO研究所?どこそこ?で、なんのよう?」
「いや、実は今助手を募集しているのですよ・・・。」
「は?だからなん・・・。」

そこでおばさんチャオが急に言った。
「あ!成る程、この子を雇いたいと言うことですね!」
「そうですそうです。じゃあ、給料は此処に一部出すことに。」
「ちょ、ちょっと!なんで勝手に雇ったことに・・・。」

すると、おばさんチャオは冷たい口調でこういった。
「この人の助手で働かなかったら、此処追い出すよ。H。」
「う・・・。」

と言うわけで、この有様だ。
Hはふぅとため息をつきながら車の窓から見える、
夜の景色を眺めていた。
運転をしていた、DはHに話しかける。

「じゃあ、助手君、いや、名前で呼ばせてもらおう。」
「そうですか、ならご勝手に。私はHです。」
「成る程、夜の職業で使う名前で・・・。」
「・・・そのHじゃないです、本名です・・・」

Hは顔を赤らめて下をうつむきながら呟いた。
Dはこの赤らめて反応する姿を見て、
あぁ、この子はいじりやすいなぁと思い、薄笑いを浮かべた。
いや、タダの人見知り(チャオ見知り?)と言うだけかも、
しれない。

「まぁ、早速調べに行くよ。明日の朝までに現地に行かないと。」
「何を調べるんで?」
「怪奇現象だよ。か・い・き・げ・ん・し・ょ・う。」
「はぁ・・・。」

Hは普通に返答をする。
Dは先ほどのようにいじることが出来なかったのが悔しいのか、
悪態をついた。
しかし、次のDの言葉にHは背筋を冷たくする。

「その怪奇現象はね「消えるチャオ」なんだよね。」

数時間して、車が都心に近いホテルに止まる。
Hは場所的には恐くないなと思って安心して此処を降りた。

ホテルの部屋の中でDは説明を始めた。

「いやさ、どんなことかというとね・・・。」

とはいっても、Hは長い話の中に99%は無駄話だなと思って、
勝手に要点の所を抑えた。

つまりは、明日近くの庭に行くらしいが、
そこでチャオが消えるのだという。
だが、そこには芝生の広場とプールしかないらしい。
今は立ち入り禁止になっているらしい。
チャオ警察は毎日捜索をしに来ているという。

・・・1%を抜けばこのくらいだ。
そして、要約しているうちにDは勝手に寝ていた。
HはDを殴りつけようかと思ったが、
給料主であることには間違いないのでやめておいた。

夜の鉄工業地帯は黄色や赤の光が交差していた。



Bに続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第206号
ページ番号
2 / 3
この作品について
タイトル
D&H
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第206号