3・ZERO
「私はね・・・この夢の石を使えると思ったの。」
「夢の石?何じゃそりゃ。」
「黒いチャオを白くして、白いチャオをさらに白くする。」
「ほぉ、で、それがどうしたんだ?」
「だから!これを使うと夢でそういう心になるはず・・・。」
レインはすすり泣きを始めた。
一人で生活するヒーローチャオもさしずめ一匹のチャオか。
俺もそうだけどな。
「私ね・・・実はダークとヒーローの子どもなのよ。
だから、夢の石で私は悪夢を出してしまった。
そして、私自身の夢は良い物に・・・。」
「だからあんな夢を・・・。」
「でも、一度でもあなたをヒーローの心を入れれば、
私と同じになるのよ。」
「そうだけど、おまえは何がしたいんだ?」
するとレインはぼそっとつぶやいた。
「・・・もう一人にはなりたくないから。・・・ね。」
レインは純白の身だった。しかし、心はそうでなかったのだ。
黒と白の灰色。迷いの色だったのだ。
俺は勘違いをしていたようだ。
「もう一度使ってみるか?」
「え・・・でも・・・。」
「使ってみるか?」
有無を言わさない口調もあってか、
レインは良いよと言った。
そして、夢の石をレインに手渡した。
次、悪夢が来たら、俺はもう離れよう。
俺も一人でがんばりたいから・・・。
でも、もし、幸せの夢が来たら・・・。
もう一度、二人でゼロからやってみよう。
「・・・・・・。」
「あ、起きたのね・・・。おはよう。」
「あぁ。・・・これは夢なのか?」
「え?夢もなにも二人で池の前で眠っていたでしょ?
いま気付いたからダーカを引っ張って来たの。」
「え?何で俺の名前を?」
「だって、もう私たち二人だけで名前を知らないはずが無いよ。
そうでしょ?」
「え・・・嘘だ・・・。」
「嘘じゃない。・・・嘘じゃない。」
「あ、ごめん。泣かせて・・・。」
「それじゃぁ、お詫びに幸せって言って。」
「え?あぁ・・・幸せだよ。」
俺は心から言えたような気がする。
言葉を少し交わせただけで。
なんでだろ?俺は幸せになりたいのか?
そうか。そうだよな。俺は幸せだ。
ヒーローとダークの心を持っているハーフだとしても、
俺を暖かく看護してくれたんだ。
そうさ。俺は幸せだ・・・。
例え、あの悪夢を見たとしても、これまでの経緯が分からなく、
ちょっと混乱気味になっても・・・。
ん?からだが軽くなった?
もしかして・・・きっと、そうだよな。
「起きた?」
「あぁ、起きたよ。・・・俺はおまえと同じさ。」
「同じ・・・。もう、一人じゃないんだね。」
「そう。外見が違っても俺たちの心の中は同じさ。」
俺はそうして、外に出た。
景色もきれいに見えるし、何もかもが平和だった。
「・・・もう、いなくなるはずがないよね・・・。」
「そうさぁ。そんなはずないよぉ。」
「何かなまっちゃっているよ。わざと?」
「いや、おまえの、いやレインの口癖が移ったみたいだな。」
「そうだ、名前を言ってなかったな。俺はダーカだよ。」
「うん。じゃ、これからもよろしくねぇ。」
何かが訪れようと心は二度と変わらない。
そうやって、夢の石が輝いたように感じた。
そして、長い月日が流れた。
でも、彼らは変わること無かった。
カオスチャオとなっていたのだ。
ダーカはダークカオスチャオそのものに。
でも、ヒーローが入っているのか目は普通の目。
レインはヒーローカオスに。
でも、ダークが入って茶色の髪の毛が伸びている。
ある日、ダーカは旅に出ることにした。
レインは止めはしなかった。絆があるから。
・・・指定された物は見つかりません・・・
そうやってすれ違ってきても、
・・・指定された悲劇も見つかりません・・・
そうやって元通りになれる。
そんなことを思って二人は同じ空を見上げた。
「ハートの雲なんてめずらしぃねぇ。レインも見てるかな?」
「ハートの雲かぁ。ダーカちゃんと見ているのかなぁ。」
終わり。だけど、二人は終わらない。