1・裸足の女神

しくじった。
もう、俺に逃げる術はないのか・・・?
いやぁ、まだ逃げれる、逃げることが出来る。
あぁ、家か・・・どうせ敵の家だ・・・。

そうやって黒いチャオは倒れた。
軍服姿。とげとげとしたぽよ。
しかし、その姿はあまりにも無惨な光景だった。
でも死んではいなかった。

『・・・はい。必ず、この星を滅ぼします・・・。』
『頼んだぞ・・・。おまえにな・・・。』
『はい!』

・・・・・・。

『くそっ、ヒーロー軍に追いかけられている!』
『ちっ。あ、後!』
『くっ・・・撃たれた・・・。』
『おい!親友!死ぬなぁ!』

・・・・・・。

『戦艦が燃えてやらぁ・・・ははは。ひとりぼっちか。』

これまでの思い出が走馬燈のように思い浮かぶ。
そうして、俺だけが残ってしまった。
もう、思い起こす事もなくなってきた。
寝よう。寝ればもう終わりだ・・・。

チャオはそのまま目を閉じた。
わずかに目からは涙がこぼれ落ちていた。

「・・・大丈夫?ねぇ、分からないの?」
「うぅ・・・此処は何処だ?」

そうして目を開けた。
そこには、一人の少女がのぞき込んでいた。

「・・・気付いたんだねぇ・・・。」
「お・・・まえ・・・白色だろ・・・。殺すなら・・・殺せよ。」

俺はとぎれとぎれに言った。
どうせ、こいつらに助けられるような縁はない。
殺すなら早く殺して欲しかった。

「いやだよ。殺すなんて・・・。」

俺はその純情な目も、ただの蛇の生殺しにしか見えなかった。
白色が何を抜かす。殺すなら早く殺せ・・・。
頼むから・・・そんな目線を向けないでくれ・・・。

「ち・・・くしょお!」

そう言って俺は近くの机を叩いて起きた。
俺は洗いざらいぶちまけた。
俺は早く殺して欲しかった。そうするには自白しかない。
俺はただの黒いチャオでなく侵略人だと。
そして、仲間は全員死んだと!俺だけしかいないと!

でも、其奴は黙って、俺を見ていた。
そして、こういった。
「どうせ私もひとりぼっちだよ。」

そうして、そいつも話し始めた。名前はレインと言った。
家族が全員殺されたこと・・・。
俺は黙って聞いていた。そのありきたりな戦争話を。
しかし、リアルに感じた俺は泣くしかなかった。

昔、戦争の映画を見たことがある。自分の星で。
そんなとき俺は友人にこういった。
「有名なチャオが演じるんだし、ありきたりすぎるよ~。」
そんな奴が、いま、ここで涙を流している。
本当に馬鹿な話なのかもしれない。

「私たちってにているよね・・・。」
「外見は全然違うけどな・・・。」
「おもしろいこと言うわね。ふふっ。」

そう言って、彼女は笑った。
俺もつられて笑った。
しかし、それは自分でも気付かない偽りの笑顔だった。

その日の夕焼けはとてもきれいだった・・・。
と思えるはずだった。
「夕焼けが・・・きれいに見えない・・・。」
俺は、夕焼けをきれいと思えなかった。

何でだ?何でだろう・・・。俺はきれいに見えない。
何でだ?

「ねぇ、何かあったの?不安そうな顔をして。」
「いや・・・別に、何でもないさ・・・。」

俺は笑顔を「作った」。
そして、その翌日も景色をきれいと思えなかった。
何日も何日も・・・。それは続いた。

ははは・・・やっぱり俺は悪だ。
悪の塊だ。
一ヶ月経って俺はそう思うようになった。

もう・・・。やっぱり此処にいるわけにはいかないんだ。
そうだ、何で俺は回復しているのにいつまでも此処にいる?
俺は悪だぞ?悪なんだぞ?
・・・その時、不意にレインが言い放った。

「改造は失敗だったようね・・・。」 

は?改造?

「心を完全に悪を取り除けなかったみたい・・・。」
「ちょっとどういうこと・・・。」
「ジ・エンドね。」

そうして其奴は銃を構えた。
俺は実験器具だったのか?それとも俺を本当に悪から・・・。
考える時間を其奴は許さなかった。

でも、それでも楽しかった。
やっぱり仲間は言い物だ。
ん?仲間?そうだよ、こいつは一時期の仲間だ。
そう思えばいい。
俺の心を少しでも楽にしてから死のう・・・。

パンという乾いた音が響いて俺に衝撃が走る。
俺の意識は遠のいていくどんどんどんどん・・・。

「・・・起きて・・・ねぇ起きてよ!」
「え?あぁ・・・。」
「レインよ。分かる?さ、早く体を治さなきゃ。」
「おまえ・・・俺を殺したはずじゃ・・・。」
「へ?そんなことするはずないよ。」

俺は時計を見ると、夕方だった。
そうか、昼寝をしたわけだな。
ふぅ、気持ちが落ち着いた。そうだよ。俺は助かった。
俺は悪い夢を見た。そう思ってあわてて顔をパンパン叩いて、
洗面所の場所を聞いた。 

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掲載号
週刊チャオ第186号
ページ番号
1 / 3
この作品について
タイトル
404 NOT FOUND
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第186号