--3

あの再会の場面で、彼は僕に対してどんなふうに思って接していたのだろうか。
僕が今、彼に対して抱いているような、ひどく不器用で、言い表しようのないもやもやを感じながら接していたのだろうか。
僕には、そうは思えない。
彼のそぶりはナチュラルだった。
そもそも彼は、固より自分が他人からどう思われるかなんて、全然気にしていないようなところさえある。
彼は小学校のときからずっといじられやすいキャラだったが、それでも楽しく生きていた。
いつだってそうなんだ。

ひょっとすると変わってしまったのは、彼ではなく、僕の方なのかもしれない。
勉強や社会というものから目をそらし、結果としてチャオの世界へ逃げ込んでしまった僕が。

チャオBや、そこで育まれていたたくさんの文化……チャオ研究やチャオ小説といったものに多大な感銘を受け、そこにたくさんの時間と労力を費やしてきた。
でも、一つだけ、恐れていたことがある。
それはこの世界にいくら力を注いだとしても、周りの人は誰もそれを理解してくれないということだ。
例えばチャオBに立てた企画ツリーが今までにない成功を収めた。そう誰かに伝えたとして、その価値を分かってくれる人がいるのだろうか。
その答えは、Yesだ。
同じBBSの参加者なら、きっとこの感情を理解してくれる。

僕にとって、チャオとは、世界の縮図だった。
チャオの持つ、統一的な遺伝のモデル。
チャオBBSで繰り広げられる、若年層と高齢層の衝突。
そして週チャオには無数の作家群と、それを束ねる編集部という「社会」がある。
現実にも適応できそうなたくさんのパターンを、僕はそこに見出していた。

こんなこと、現実という世界に生きる人達に言っても、なかなか伝わらないのかもしれない。
でも、その当時僕が求めた社会的承認というのは、全てそのチャオ世界の中に通じていた。
それが僕にとっての現実であり、実像だったのではないだろうか。
今になって思う。
真に現実に取って代われるようなバーチャル・ワールド、というのは、いつだってチャオのような姿をして現れるのかもしれない。

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
3 / 5
この作品について
タイトル
2メートル50センチ
作者
チャピル
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号