デノカシクファウロッセ
結局この本は一日で読みきることができなかったため、借りて家で読み進めることになった。
結果から言えば、この本はビンゴであった。
この本には隠された魔法についての情報があった。
それも僕が期待していた量よりもはるかに多く、だ。
おそらく魔法がこの世で使われるようになる前に書かれたものなのだろう。
内容は魔法の存在を示唆するものであった。
この世界には存在しない法則の存在があり、それがこの世界に入り込む可能性のあるものと仮定した上でどのような脅威が存在し得るかを書き表していた。
様々な憶測の中に、情報を操作する技術の存在があった。
そしてこの技術だけは多くのページを割いており、文章から伝わる著者の熱意は他の憶測とは比にならないものであると言外に伝えていた。
ここに書かれている内容をそのまま受け止めるのであれば、魔法は元々はこの世界に存在しない力であるということだ。
また、著者は魔法に代表されるような異界の力のことをデノカシクファウロッセと呼んでいた。
この本では、異界の力がこの世にやってくるにはある程度の条件を満たしていることが必要だと主張していた。
例えば魔法であれば、この世でも魔法が使えるように世界を適応させる必要があるし、そもそも別世界からこちらへやってくる手段が必要となるのだ。
つまり、少なくとも魔法が使える環境にできる技術と他の世界へ行く技術が隠されていることになる。
いよいよどうして著者が魔法について他に比べ執拗に書いていたのかが明らかになったのは巻末のページを見た時だった。
そのページは空白だったが、それを見た瞬間僕の脳内に多くの情報が入り込んできた。
それはまさに探していた隠された魔法によってそのページに埋め込まれた情報だった。
僕が得た情報は、ある条件を満たした者(その条件については言及されていなかった)にのみこの情報が取得可能であり、さらに他者へこの情報を伝えることが不可能であるようだった。
それもまた未知の魔法による細工なのだろう。
そのような厳重な方法によって守られていた情報は、先述の二つの魔法だった。
人間以外に情報を埋め込む技法が一つだ。
今まさに空白のページがそうしているように、過去に埋め込んだ情報を他者へ発信することも可能のようだ。
もう一つは他世界への移動を実現する技法である。
これは一つ目の技術の応用であり、空間に他世界へ行くゲートを作るものであるようだった。
空白のページにある情報よりこれらのやり方を僕は習得した。
どうしよう。
どうしたらいいんだろうか。
そう悩む一方で、早速この力を使ってみたいという欲望もあった。
異世界。
そこにはこの世界にないものがあるかもしれない。
例えば、チャオ。
ゲームの中の存在であるあの生物がいる世界などに行けないだろうか?
そう思い、実行した。
異世界へ――