第1話
200X年、トーキョー・シブヤ。
チャオの「リアル化」に成功し、言葉を話せる生き物として「1人1匹」が大流行。
数年前のペットブームなんぞどこ吹く風の世界。
人間の言葉を喋り、自由自在に進化するチャオは「ペットを越えたペット」なのだから。
そんな中、シブヤの街をチャオと共に歩いていた4人の女子高生から、物語は始まる・・・
夢を継ぐ者 ~第1話・とある休日~
まずは、この物語の主人公達から。
吉原絵梨、連れのチャオはウララ。
中払知美、連れのチャオはバジル。
倉田菜穂、連れのチャオはミスト。
大柳優子、連れのチャオはレーナ。
全員、17歳の高校2年生。
中学ん時の同級生で、皆高校は違うが、休日はシブヤに集まって散歩する。
【倉田】「でさー、今度のライブ見に行くの?」
【大柳】「行きたいけどこづかい足りないよ~・・・みんなは?」
【吉原】「あたしも。ケータイの料金払えなくなりそうだし。」
【中払】「あたしは大丈夫だよ。んじゃ、2人になっちゃうかな?」
【バジル】「トモミ、ホントウニ、ダイジョウブチャオ?
ママ、オコッテタチャオヨ?」
【中払】「うそっ!?マジで!?」
【吉原】「どうやら、バレちゃったみたいね~」
【一同】「ははははは・・・」
場面は一転、霞ヶ関、国会。
1月に始まった通常国会は、この『新しいペット』チャオに人権を適用するかしないかでもめにもめていた。
政府と与党が「動物愛護法の改正でカバーできる」と主張するのに対し、野党が「チャオにも人権の適用を」で一歩も引かない。
【野党議員】「感情や言葉を理解できて、さらに普通に言葉も話せる!もう人間と変わらないじゃないですか!
それなのに動物扱いですか!?」
【総理】「ですから、人権は人間にのみ適用されるものなので、動物愛護法の改正で対応しようと・・・」
その夜、吉原の家。
ニュースも国会の話題でもちきりである。
【アナウンサー】「チャオにも人権を、と主張する野党に対し、総理の答弁は相変わらずの歯切れの悪さ。
与野党の議席数が拮抗していることもあり、調整は難航しそうです。」
【吉原】「ウララ、どう思う?」
ご飯を食べながら、彼女は聞いてみた。
果たして、こんな難しい話題がチャオに分かるかどうか、不安だったが、
【ウララ】「ウララ、エリトイッショダヨネ?
チガウアツカイサレタラ、イヤチャオ!」
この答えに正直彼女は驚いた。
が、その感情をしまいこみ、
【吉原】「そうだよね・・・ウララとあたし達は同じだもんね・・・」
事実、民放のバラエティー番組では、俳優やタレントのチャオが一緒にレギュラー出演してたり、チャオのタレントなんかもいた。
少なくともマスコミの世界では、既に人間とチャオは同じ扱いだったのだ。
しかしチャオの体では限界がある。
いわゆる科学者や大学教授、技術者などの世界にはチャオの入る余地はなく、この業界は与党案を支持する声が多い。
さらに海外からの視線もある。
チャオは人間以外では唯一の高度知能生命体なので、世界中が日本の国会の成り行きに注目した。
実は国連でも同じ様な議論がなされていて、日本の決定次第ではどちらにも転がる可能性があった。
吉原は優等生という訳ではないが、父親が国家公務員をしているだけにこういう事情には明るかった。
(続く)