秋
     秋 「であい」
 僕は入院することになった。毎日つづく点滴、ベッドから離れられず、自由な食事もない。そんな生活に、僕はわずかな充実を感じていた。
 退院まであと一週間というころ、同じ病室の隣のベッドに別の子がやってきた。
 その子はもうすぐ亡くなるのだという。
 けれど、その子は起きている間、ずうっと絵を描いていた。
 なんで絵を描いてるの?
 と、僕は聞いていた。
 絵を描くのが好きだから
 その子は答えた。
 気がつけば、僕は何回も同じことを聞いていた。その子の絵を見るたびに、何回も。
 響きの違いを確認するように、何回も。
 僕は走ることをやめた。

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