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「後ろを振り向いてはいけない」
これは、自分自身への自分が出した警告である。
俺はどこにでもいるようなニュートラルチャオ。
まだ成人していない。ごく普通の学校に通う学生だ。
今朝、俺は普通に学校に行った。遅刻したわけでもなく、何か欠けているわけでもなく。
何も変わらない日常だった。最寄の駅から、学校付近の駅まで電車で通学。
そして、普通に授業を受け下校。ちょっと下校が遅れたくらい。
それだけなんだ。俺は、それだけなんだ。なにもしていない。
「レナルド!おい!レナルド!」
授業で疲れて眠っていた僕に物凄い勢いで迫っている、僕の親友。アレックスだ。
アレックス「レナルド!起きろったら!」
レナルド「なんなんだよ畜生が…」
レナルドは何か、人とは違う生き方をしていると自覚していた。
何かと考え込む性格がそう思い込ませているのかどうかは本人にもわからない。
他人を頼らず、一人で生きて生きたいと願う。
親が暴力を振るったわけでもない。いじめられているわけでもない。精神に異常はない。
ただ単に、安全な線を踏み続けてきた。それも、自分の知恵のみで。
そんな生き方をしていたのだ。
もちろん、このレナルドに対するアレックスの呼びかけも前もって何事かと軽く考えた。
だが、思い当たる節が思いつかない。誰であろうと、嘘を吐かれるのは大嫌いなレナルドにとって、本当に謎であった。
アレックス「相変わらずすっ呆けてんな(笑」
レナルド「用が無いんならさっさと家帰りなよ…。もう放課後だろうがよ」
アレックス「お前に言うセリフを全部取られたような気がすんぜ」
レナルド「それ言うだけのためにここに来たんかお前?」
アレックス「いや、違う違う。もうホント疲れたよ」
アレックスの息は荒れていた。
レナルドは教室の片隅で寝ていた。疲れたらそこが寝床なのだ。
アレックスは少しも迷わず、そこまで走ってきた。どこから走ってきたのか?それはこれからわかる。
アレックス「一緒にかえらねーか?」
意外にもそんなつまらないことだった。てっきり、教師と教師の熱愛現場に居合わせたとか面白い遊戯をどっかで覚えてきたかとレナルドは考えていたのだ。
一緒に帰っているわけではない。途中から道が違うので、そこまで一緒に行くこともできるがしなかった。
気を使うと思い、避けていたのだ。仲が悪いわけではない。本当に仲の良い関係だった。
レナルド「失恋でもしたんか?(笑」
レナルドは笑いながらそう聞いた。アレックスには一緒に登下校をしない理由を言っておいた。
それにも関わらず、レナルドを下校に誘った。
アレックス「違う違う。実はさ、めっちゃ腹が減ってて急いで帰ろうとしたの。で、駅まで走ったわけよ。」
レナルド「なんで引き返して来たんだよバカ」
アレックス「話は最後まで聞くもんだ。そんでさ、駅でなんか事故があったみたいなんだよ」
レナルド「ここから駅まで近いんだし、駅は学校に連絡の一つもよこさなかったのか?」
アレックス「それがさ、俺が駅に着いた直前に起こったみたいなんだよ」
レナルド「なんだそれ?」