■ 前半 ■ (1)
ここはステーションスクエア。
カオスの暴走で壊れた街も徐々に元に戻りつつあります。
人々は互いに協力しあい、どんどん街を元の姿に戻しています。
そして、ステーションスクエアにもカオスが暴走してから初めての12月が来ました。
12月の半分が過ぎ、街は様々な飾りで彩られます。
これからしばらくはステーションスクエアに色々なイベントが訪れる時期です。
クリスマスや新しい年の始まりを祝うイベントは勿論、チャオが初めて発見された日を祝うチャオ聖誕祭というイベントもあります。
人々は、そしてチャオ達はそれらのイベントに胸をおどらせます。
そう、ここには聖誕祭を楽しみにする人、クリスマスを楽しみにするチャオ、とんでもないことを起こそうとする集まりなど多種多様な人やチャオがいるのです。
「ふうー」
「いやあ、すまないねえ。大変な仕事させちゃって」
「いやあ、いいんですよ。聖誕祭、いいものにしたいですし」
ステーションスクエア中を鮮やかにするチャオ聖誕祭の飾り。
その飾り付けをしているのは大半がボランティア。
今までは専門の業者の人達が行っていましたが、
カオスの暴走の影響を受けたせいかどこからか今回はどのイベントもみんなで協力しようというルールがどこからか自然と出てきたのです。
「しっかし、ようやるねえ。他にやりたいことがあるだろうに」
「いえ。俺、聖誕祭好きですから」
「へえ、そりゃまた珍しい」
「俺の誕生日、聖誕祭と同じ12月23日なんですよ」
青年は微笑みます。
青年が聖誕祭に集中する理由はそれだけではないのですが、青年はどうしてだかそれを言わないようにしています。
そんな聖誕祭の飾りだけでなく、クリスマス、どこかの国で行われるというタナバタというイベントなどと季節に関係ない飾りで埋め尽くされた家がステーションスクエアの端にあります。
「さて、諸君もわかっていると思うが…」
その家の中でたくさんの若い人達が集まって何かを話し合っています。
中には怪しげなチャオなどもいます。
そして、その集まりのリーダーと思われる青年が大声で言いました。
「この12月下旬のイベントラッシュこそが我らにとって最大のチャンス!!全宇宙、全世界、全ステーションスクエアを我らの渦に巻き込むのだ!!」
「会長!後になるほど規模が小さくなってます!」
どうやら、イベントごとに派手に騒いでいるイベント好きの集まりのようです。
彼らの活動はイベントが続けていくつもあるこの時期に最高潮になるのです。
彼らの計画はどんどん進んでいきます。数あるイベントに向けて。
集まっている人達もいれば、一人でいる人もいます。
人のいない街の角で息を切らしている男の人がその一人です。
「はあ、はあ。ここまで逃げればひとまず大丈夫だろ…」
彼は脱獄をしてきたのです。
罪を犯して、そして捕まって。周りの人はみんな驚きました。
なぜなら彼は犯罪とは無縁の優しい人だったのです。
しかし、彼には事情がありました。脱獄をしなくてはいけない、大切な理由が。
そして、どうにか成功して今ここにいるのです。
ゆっくりしたいと思っていた彼を捜す集団の姿が再び彼の目に映ります。
彼は溜息をついてから、また走り出します。
(続きがあります)