第6章 とてもとっても長い一日
・・・今日も一日はりきっていこう!」
と口にはしないけどこうして固く決心するあたし。毎日毎日が何かと辛いし気合がないとどうにもならない。
最近魔法の腕も伸び悩みだし・・・あたしに対する障害が何かと多い気がする・・・
晴れ渡る青空の下 彼女の重いため息は瞬く間に心地良い風の一部に姿を換えた。
その風は彼女の頬をやさしく撫でるようだったが当の彼女は気づきはしないだろう、それよりも彼女の今の関心はようやくその姿を見せはじめた街外れの一軒家に集中していたからだ。
彼女の悩み、障害の種は近づいていく毎により大きく鮮明に映し出された。
シェア「おはよ~」
ドアノブを掴むと同時に口から溢れてくるこの言葉、おなじみの始まりである。
そしてすぐに中の住人から返事の挨拶が返ってくる。
リンネ「おはようございます シェアさん。」
あたしを除く誰もが爽やかだと思うけど、あたしはそう思わない。
何よりもこのミディと同じ一つ屋根の下で寝ている事が許されない!
体内であふれ出るどす黒い感情をおしこめつつ笑顔を作る。
このやりとりもまたあたしの条件反射になると思うと気分が重くなる。
ニァ「もう朝食はもうニャいにゃ。」
テーブルに視線を移すとまたあたしの障害が。
出会って日も経ってない、ほとんど初対面のくせにこの自宅に住み込んでいるし・・・
何より忘れられないのはあいつに抱きついちゃった事。十年近く仲良しのあたしでもそんなこと出来ないのに・・・
そして第一声が朝食もうニャいってどういうこと?食いしん坊じゃないんだからあたしは!
レア「あっ!シェア~♪」
この子だけは例外 あたしの一番の親友。
そしてエプロン姿のレアを見たのはとてもめずらしい事。
元々料理は苦手でキッチンなんかはよほどのことがない限り入らないというのに・・・。
エプロンの汚れ方が更にそれを際立たせていた。
あまり料理が得意じゃないあたしでもこの子になら勝てる自信はある。
シェア「ところでパラディと・・・ミディは?」
先に出て行った自分の弟と家の主でもある彼がいない事に気づいたシェア。
そしてこの空間内には女性しかいないという事も同時に気づく。
いつもならいるはずの彼等がこの場にいない事に対して疑問を持ったシェアは咄嗟にこの言葉を口にしたのだった。
レア「二人はあそこだよ!」
その答えは「窓」であった。
親友の言われたとおり窓の近くまで歩み寄り、外の様子を覗き込んだ。
まず自分の顔がうっすらとガラスに映りこむが更に近づくと外の景色が少しずつ見えてくる。
吐息が窓ガラスを曇らせる・・・曇りを手で拭きとってもう一度よく見ると・・・
シェア「・・あっ・・・」
レア「ね?」
そういうと同時にレアはシェアの身体に軽くもたれかかり同じように外を覗き込む。
続いて他の二人もその窓に集まっては後に続いて同じ事をした。
そして次々に思い思いの感想を発した。
リンネ「二人とも大変ですね」
ニァ「フ~【さむらい】もおっそろしいニャ!」
レア「でも楽しそうだよね!」
リンネ「はい 笑顔ですし・・・」
ニァ「ニャんか・・・ウチ達置いてけぼりみたいニャ~」
シェア「くっだらない! あたし本読んでおくから!」
刺々しい言葉を発した――と周囲も自分でもそう思った。
怒っているようにも周りには映ったけど全然そんな気はない。
むしろあたしはその光景を見てすごく嬉しかった、と同時に安心していた。
それでも何故か思ったこととは逆の行動をとってしまう、それがあたし。
でも今のあたしにはそんなの悩みにならない。
「悩んでいる暇があるなら・・・がんばらないと!」
今のあたしにはそんな気持ちでいっぱいだった。