第3話 銃刀法違反、そして
「なるほど、困った飼い主さんだね……」
大地は短い腕を組んで頷きました。
「それでそのヒーローチャオは、丸腰のおれを馬鹿にしたチャオよ」
「どっちかというとガムを踏んでいるのを馬鹿にしたんだと思うけど」
それでもきちんとチャオベエの言わんとすることを理解した大地は、突然もとの厳つい軍人、ガイアの姿に戻り、どこからともなくミニカーでもラッパでもなくとても物騒なものを取り出しました。
黒光りする鉄。 L字型のフォーム。
いかにも回転しそうなたくさん穴の開いた筒に、いかにも指で引くことの出来そうな引き金。
見るからに物騒なそれは、チャオベエの飼い主さんがよくやるゲームに出てくる、「銃」という武器でした。
「武器が欲しいんだろ。 ご近所のよしみだ。 レンタル料は取らない」
「いやいやいやいや、銃刀法違反チャオ」
「こんなご時世だから、この商売もなかなか儲からなくてな」
「いやいやいやいや、儲からない方が助かるチャオ」
「ともかく受け取れよ、礼は要らないから」
そういってガイアは銃をチャオベエに押し付けます。
「えっ、いや、いらないチャオよ! やっぱりもっと危なくないものがいいチャオ!」
そういってチャオベエは銃をガイアに押し返します。
「危なくない武器なんてあるかよ! いいから受け取れ!」
銃を掲げて猛突進してくるガイアを、チャオベエは危うく横にかわしました。
「わわっ、なんでそんな必死チャオか!?」
「そ、そんなことはない! とにかく受け取れ!そして俺に感謝しろ! さもないと鼓膜破るぞ!」
「意味が分からないチャオ! 一体何がしたいチャオ!?」
そう聞かれると、ガイアは後ずさり、ちょっと恥ずかしそうに目を逸らしました。
「─その……一日彼女ってやつ、俺にもチャンスを」
ガッ!!
大地に戻った元ガイアに泣いて頼まれて仕方なく銃を手にしたチャオベエは、再びてくてくと先へ進みます。
こんな調子で、迷子のチャオを見つけ出すなんてできるのでしょうか。
ヒーローカオスの、あの不気味な笑顔……もしかしたらとても怖い手下を沢山抱えていて、チャオベエの行く手を阻もうとしてくるかもしれません。
命の危機を感じたチャオベエは、もしものときに役に立つかもしれないと、銃を調べてみることにしました。
飼い主さんがやっていたゲームのことを思い出して、とりあえず弾薬を入れるところを開けてみます。
「……見事に空っぽチャオ……」
結局役に立ちそうにはありませんでした。
「やあ、こんにちは」
後ろから声がして、チャオベエは振り返りました。 警察官の格好をしたオニチャオのおじさんです。
チャオベエも少し不機嫌に挨拶を返しました。
すると、おじさんはチャオベエの手元をじっと見つめはじめました。
もちろん、銃を持っているほうの手を。
(し、しまったチャオ……!)
チャオベエがそう思った瞬間に、おじさんは叫びました。
つづくっ!(エウレカ風)
ガイア君と大地君が書きやすくてめちゃくちゃ助かりました。
っていいながら勝手に退場させてしまいましたが(蹴)