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木製のドアを押し開けて店内にはいった。
店の中は表通りとは打って変わってとても落ち着いた空気が流れていた。
天井から降り注いでいる間接照明の柔らかい光。
木材のいい香りで満たされた店内。
どこかからゆったりしたリズムのBGMが流れている。
棚にはセンスを感じさせるような整然とした並び方で木の実、被り物、小動物などいろいろな商品が並べられていた。

買い物をしている他の客も、自分のチャオと笑いながら楽しそうに品物を選んでいた。
なるほど。いい店ってのはこういう店のことを言うのか。
俺は直感で納得していた。

「お客さん、こちらへどうぞ。」

店員がタイミングを見計らったように俺を案内した。
連れて行かれた先は、一見してペットショップの一角のようだった。
腰のあたりまでの高さのケージで5メートル四方程度を囲んであり、その中で数々の小動物が歩いていた。

店員がケージの中に入り、一匹の小動物を抱えて戻ってきた。
顔や体の至る所に継ぎ接ぎで縫ったような痕がある。
瞳が見えない黒ずんだ目に、なんだか少し哀愁を感じる。
そう、その小動物とは、骨犬であった。

「はい、これをキャプチャーさせてください。」

そういって店員は俺に骨犬を手渡した。
またもやミッツが幼げにうなるので少し素早く手元まで骨犬をおろしてやる。
ミッツが骨犬を抱えると、首を振り、きゅぴーんという音と共に光の粒がミッツを包んで弾け散った。

「はい、これでカボチャを被れるはずですよ。」

「はあ、ありがとうございます。」

俺が礼を言うと、早速被らせてみてはと店員が言ったので俺はカボチャをミッツに手渡した。
すると今度はクエスチョンマークが数秒でエクスクラメーションマークに変わった。
そして頭にかぽっ、とはめ込んだ。
おお、やっぱ実際に被ると変わるんだな。目がまん丸になっていた。

ミッツ自身もうれしそうだ。店員から貸してもらった鏡で自分の顔を見ては鼻歌を歌っている。
俺が骨犬の料金を支払ってから「気に入ったか?」と問いかけると、

「とぅいっくおーたいーて♪」

と満面の笑みで返してくれた。

俺には、ミッツが「Trick or treat」といったような気がした。
店を出てから、ミッツにあめ玉をあげて帰った。
帰り道の途中でもミッツは鼻歌を歌っていて、おれは時々歌に
「はーおうぃん、はーおうぃん」
のフレーズが混じるのを聞いたような気がした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第294号
ページ番号
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この作品について
タイトル
Trick or treat?
作者
トリップ(ユリカゲ)
初回掲載
週刊チャオ第294号