12話 右手は一つ、腕は二つ
とある組織 12話 右手は一つ、腕は二つ
「これで、俺の勝ちだ」
右手を1、2コースの方へ少しずつ向け、残りの二人まで焼き尽くそうとする。
「でやぁっ!!」
炎の中からチャオが飛び出してきた。五本指のチャオは、殴り飛ばされた。
「貴様っ…!!何故!!」
「一応修行をしたんだ。途中でやめたけどね」
スマッシュが、五本指のチャオに歩み寄る。
「あっちに帰ったら修行をしなおさないと…炎で熱がってちゃ…ね」
五本指のチャオは魔法を放とうと右手をスマッシュの方に向ける。スマッシュはその右手を蹴り上げた。
「右手さえ向けられなければ、弱いチャオだもんね。馬鹿でもそんくらいわかるもんね」
「いだだだだっ!!噛むなっ!噛むなーーーっ!!」
「…まずぅ~」
「ふんっ!俺は短気なんでねぇぇ!!終わりにしてやるぜっ!!」
と、彼は右手から炎を出そうとする。
「短気は損気だよ」
スマッシュの言葉で集中力が抜け、炎は出なかった。
「まぁよい…究極奥義…!!」
「まだ1回しか魔法成功してないのに、そんなのすんの?」
「うるさいっ!お前が邪魔をしているだけだろぉぉぉ!?」
そう言ったときには、スマッシュの真上に巨大な炎が現れていた。
「うわぁ…火遊びは禁止だよぅ?」
「遊びじゃねぇよ」
「そう…じゃあ本気で行くよ?」
「!?」
スマッシュが地面を叩く。すると、数十秒間大きな揺れが発生した。
「あんな炎も、落とさなければ意味はないんだよ…」
揺れている中、スマッシュは五本指のチャオを掴み炎の中に投げ入れる。
「消滅!!」
五本指のチャオが慌てて叫ぶと、炎は消えた。しかし、そのまま落下してしまった。
「魔法だけでは駄目か…!?」
と、剣を取り出す。取り出した瞬間剣は燃えだした。だが、スマッシュは既に目の前にいたのでその炎を眺めることはできなかった。
「なんだこいつっ…!?さっきまで無駄に喋っていたとは思えない…」
それっきり二人は喋らなくなり、真剣に接近戦を始める。スマッシュはパンチやキックを隙が無いように連打、五本指のチャオは、燃えている剣を振り回すことしかできない。
「でいっ!!」
スマッシュが左手でさきほどとは比べ物にならないほど早いパンチをする。しかし、その攻撃で隙ができた。五本指のチャオは燃えている剣を縦に思い切り振る。しかし、スマッシュは飛び退きそれを回避する。その直後にスマッシュは回し蹴りで剣を遠くに飛ばす。
「もらったぁ!」
剣を持っていなかった右手から少し大きめの炎をスマッシュに向けて放つ。
「君…頭大丈夫?」
「しまったっ!!さっきの炎もくらっていなかった…!!」
炎を使うと格好いい。そうとでも思っているかのように、彼は炎をよく使っている。優秀な者なら、効かなかった物は二度と使わない。
「ちくしょう…次に会った時は必ずっ…!!」
「逃げる者には言われたくないな…」
そう言ったのは、スマッシュではなくデルデムスだった。しかし、その台詞を言い終える前に五本指のチャオは消えていた。
「これで…本物を3種類見たことになるのは、俺と君だけか…」
「だねぇ…」
「しかし…意外と強いな…君」
「元からだもんねぇ~」