天使という名のプレゼント

人間界の空を誰よりも高く登った雲の上。
そこに天界はあった。
そこには天使と呼ばれる水色と白の物体が住んでいた。
人間はそれを「チャオ」とか「カオス」とか言った。

天使達は人間にある仕事をする。
ストレスというものがたまる育児の中で、
子供をまるで自分たち―天使に見せるという仕事を。

天使は寿命が人の10倍、年老いるスピードは10分の一。
だから、天使は長期間特定の人間に乗り移り、
子供時代にその人間を天使のようにした後、その経過を見る。

ここに、若い天使とベテランの天使が人間界を見つめていた。
若い天使は言った。

―で、この家族の子供に数年間乗り移れと?
―そうだ、そして、その子供をいかにも天使のように見せろ。
 この子供は今0歳だから3歳までいるんだ。いいね?
―・・・そんな意味あるんですか?
 現代社会に置いて虐待の数は年々増えています。
―だが、それは全員そうだとは言えまい。
 あくまで可能性がある限り俺たちは仕事を続けるんだ。
―分かりました。

そうはいったものの、若い天使は髪の毛をかきあげ、
人間界を見下すように一瞥した後、
その場所にさっと移動した。

人間界は夜中で、その家族は全員寝込んでいた。
母親は歯ぎしりをしている。
育児がつらくてたまらないのかもしれない。

・・・この赤ん坊が死ななければいいが。

若い天使は残念そうに見つめた。
ただ、悲しくはなかった。
あくまで、他人事、俺は仕事をすればいい。

―・・・で、この子供に乗り移れば良いんだな。

すると、天使の体中がカッと光り、
あっという間に子供の中に吸い込まれていった。
母親がその光りに気づいたのか、起きた。
だが、どうやら寝ぼけているらしい。

―・・・ふふ、私たちの子供よね。
 可愛い顔して寝ちゃって。

赤ん坊の―俺の顔を見た母親は一瞬笑顔を浮かべ、
又眠りについた。
歯ぎしりの音はもうしなかった。



3年後。

そろそろ、この子供から抜け出す時が来ただろうか。
この男の子は将来やんちゃになるだろうか。
俺が天使の顔をしても、何か奥からパワーが感じられる。

ちょうど、この子供が高熱を出し始めた。
この子供から離れろと言う暗示だ。時期が来たのだ。

―ふう、じゃ、出るか。

その瞬間俺はカッと光った。
心配そうな両親をよそに、俺は目を盗んでからだから出てきた。
光は見えるが、俺の姿は見えない。
・・・どうやら、子供の熱は下がったらしい。
両親が体温計を見て喜んでいる。
後は、この子供の行く末を見届けるだけか。



12年後。

―うっせえよ!クソババア!死ね!
―おい!おまえのお母さんになんてこと言うんだ。
―あぁ?うるせえんだよ!
―・・・昔は天使のように可愛い子供だったのに・・・。

―ま、本物の天使が入っているんだもんな。
 人間ってやっぱり、こんな程度の下等生物なんですかねぇ?

あのときの若い天使は嘲笑しながら、
この光景を、例のベテランの天使と見ていた。
ベテランの天使の方は、ライトカオスに昇格していた。
無機質な目はすっとその様子をみたあと、
こう若い天使に言った。

―ふふ、人間ってのはな、そう単純な人生は無い。
 だから、人は幸せを見つけようともがくんだ。
 最初から行き先など決まっていない。
 自分で行き先を決めるのが、人間なのさ。
 それを下等と呼ぶか、当然と思うかは、おまえ次第だけどな。
―・・・ま、期待しないで、この男の人生を見ていきますよ。



しかし、20年後。

―父さん、母さん、俺の会社がついに軌道に乗ったんだ!
 これからは楽させてやれるぞ。
 ・・・今まで、ごめんな。

―本当に大きくなったなぁ。
―おまえは、私たちの自慢の息子だよ。

これを見て、ベテランの天使は笑って若い天使に言った。

―・・・な、これだから、俺はこの仕事をやめられないんだよ。

この作品について
タイトル
天使という名のプレゼント
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第248号