第13話続き
明日になれば、わたくしは女王として、あなたをチャオにもどす命をくださなければなりません」
女王の、お母様のあたしへの愛情が痛いほどつたわってくる。・・でも・・。
お母様はあたしを強く抱きしめた。
「あなたの命を犠牲にして救える世界なんて、本当の平和な世界なんかじゃないの。
滅亡の運命なら、私はそれを受け入れます。今のわたくしにできるかぎりのことはいたしました。それより他の者があなたの力を欲している。ここも危険なの。どうか、今夜には決断してちょうだい。今夜零時にヴァンを迎えによこします。満月の今夜なら、過去の人間界にもどれるはず・・あなたはそこで愛する人と幸せになってほしい・・・!
・・・でも決めるのは麻奈、あなた自身。あなたの運命なのだから・・。」
そういい終えると、お母様は涙をぬぐい、女王の表情になって、部屋のドアをあけると外にいる番の者二人に声をかけた。
「今日はお前達はさがってよい。明日の朝まで、麻奈を静かに寝かせるように!」
そして女王とほかの者達もいなくなった。
私は一人・・・しばらく呆然と・・すわりこんでいた。
衝撃の事実に・・・。
とうてい、事実と受け入れられない。
窓から静かに沈んでいく夕日の光が差し込んできた。そう、時間もないのもたしか。
あたしは本当に混乱していた。どうしたらいいのか・・・全然わかんないよーーー。
あたしはふと、部屋の端っこにある本棚を見つけた。何冊か手にとってぺらぺらめくってみたけど、チャオ語(?)で読めない。
決断しようにも、情報が少なすぎるし、急すぎる・・・。
ひとつ、ボロボロの古い本を開いたとき、驚いた。日本語で書かれてあったのだ。
「人類再生レポート」
本のタイトルだった。作者は笹中麻奈。・・・あたしが書いたもの?!
あたしは、むさぼるように、その本を読んだ。
西暦2013年。
突如、世界中の海がプランクトンの異常大量発生により、真っ赤となり、海が死んだ。
自然サイクルはくずれ、異常気象を繰り返し、地上の90%が砂漠化。大気は汚染され、人類を死においやっていった。人類は火星に移住して難をのがれたかに思えた。
ところが、人間の遺伝子にも変化がおこっていた。子孫ができなくなってしまったのである。人類は存続できなくなってしまった。地球科学会のメンバーである、私は、同メンバーである夫智樹とともに、荒廃した地球に降り立ち、隔離されたドームの中で自らの遺伝子をつかって、再び地球で子孫が生み出せないか、研究した。
そんななか、私は自然妊娠した。
これは予定外のことであった。妊娠自体は理論的には可能ではあるが・・荒廃後の地球においては初めてであった。画期的な事実である。
10ヶ月後。子を出産した。それは女の子だった。
私達夫婦は、マリアと名づけた。古代キリストの母、マリアにちなんだのだ。
しかし、その子は遺伝子が常人の人間のものとは違っていた。
彼女の遺伝子から、ある新生物が誕生した。
私はその子達を「チャオ」と名づけた。
このチャオには驚くことに、汚染された地球にたいする抗体を生まれつきもっていた。
これは、我が子、マリアももってた。マリアは異常な速さで成長し、五ヶ月で人間の10
才の姿となった。そして、不思議な力をもっていた。そのマリアが突然告白した。「私は地球の意志で生まれました。私はこのチャオと共に、1000年この星を救います。」
私達はこのチャオこそ、人類の進化の姿と悟り、マリアと、チャオ二匹をドームの外、荒野の地球にときはなした。
この子達が、あらたな地球の住人となり、荒廃した地球を甦らせてくれることを確信して・・。
・・・・。
難しい専門用語や、遺伝子構造理論は飛ばして読んだけど・・・こんな内容だ。
最後のページに、地球病を発病し、あと半年の命とあった。
これは、私の未来?
では、私は人間でいなきゃならない。過去にもどってこの本に書いてあることをやらなければ、チャオワールドの未来も変わってしまう。
でも、マリアは1000年このチャオワールドを守ると言った。多分、千年が彼女の寿命。
そして、今、1000年たって、今度はチャオワールドが滅亡しようとしている・・。
そうか、私から生まれたマリア。
だからシャドウと結婚して、その子供が第二のマリアとなる可能性があるわけなんだ。
これはあくまで憶測だけどーー。
まだわからないことがある、あの遺跡の中でみた私そっくりのクリスタルの像。
えぐられた卵型のお宝(ルージュはそういっていた)
そして、予言されていた石版と、
何故、私がチャオとして天使の卵からこの世界に生まれたのか。
それに、シャドウとソニックはマリアから生まれたという、あのマリアって・・?
これを読んだだけでは、チャオになるべきか、人間でいるべきか、判断できなーーーいっっ!
なんか、かえって混乱してきたーーーー。
・・でも・・・。
あたしの中で何かが決断された。
普段使わないところの脳を使いまくってそうとうつかれたあたしは、ベットに横たわると