~エピソード1~
ゲーム上では、チャオが1つ年をとるのは、100分。
つまり、6歳まで生きられれば、チャオは10時間生きられるのです。
この時間は、チャオガーデンにいる時間しかカウントされないので、けっこう長く感じるかもしれません。
でも、もし、これが現実だったら。
たった、10時間しかいきられない、チャオがいたら。
もしこの世にもチャオがいて、そんな病気があったら。
ちょうどそんな病気のチャオの話を書いてみました。
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たった10時間の命
「じゃあ、コレにします。」
ボクが一つのチャオのたまごを指差しながら言った。
ボクは、チャオショップにずらりとならべられた、魅力的な何色もの卵を無視して、安いピュアを選んだ。
でも、最初からピュアがよかったわけではない。
ただ、ボクは、(べつにピュアチャオが多いわけじゃないのに)何かとピュアチャオとばったりであったり、みかけたり、長々と話し込んだり、なんだか知らないが、ピュアチャオとは縁みたいなものがあった。
それでも最初は安めのつや色にしようとおもってたが、店に入る直前に、転んで泣いているピュアチャオを助けてやってしまった(?)うえ、店に入ってすぐのところにピュアチャオのタマゴがあったので、直感的に
「もうピュアチャオにするしかない!」
と思って、ピュアチャオを選んだのだ。
「じゃあ、チャオ健康診断志願表になります。チャオの代金は100リングですね。」
はぁ、なんでピュアにしちゃったんだろ、と、いまさら後悔しながら、ボクは店員に100リングをわたした。
ボクはたまごをかかえて、(またしても3匹ものピュアチャオにでくわしながら)チャオセンターにむかった。
その日はピュアチャオのたまごを持った人は少なかった。
だが、よりによって今日はボクのほかに2人しかいなかった、ピュアチャオのたまごを持った人二人の間でたまごをかえすことになった。
ボクは、なるべくチャオと仲良くなりたかったので、たまごをゆらしてかえすことにした。
「フフ、優しいんですね。」
隣から、ふんわりとした、優しい声が聞こえた。
ふりかえると、その声の主は隣にいたもうたまごから孵ったピュアチャオを抱いた若くてきれいな女の人だった。
「チャオと暮らすのは、初めてで?」
その女の人が微笑みながら言った。
「はい、前からチャオがほしかったんで....」
ボクは少しにこっとしながら言った。
「そうですか。ピュアチャオは素直で、かわいいですよ。初心者でも扱いやすいし。」
女の人がそういうのと一緒に、その人に抱かれていたチャオがポヨを?にしてこっちのたまごをみつめはじめた。
「あら、ポエム、あなたもこれと同じタマゴから生まれたのよ。」今度はそのチャオは女の人の顔を見上げて、ポヨを!にした。
「えっ、もう名前をきめたんですか?」
ボクがびっくりしていった。
「ええ、この子、転生前からこういう名前だったんです。」
今度は女の人はチャオのほうを向いた。
「あら、ヘンなタマゴだなぁ、って思ってたの?」
ボクは、その言葉を聞いて、この人はたぶんベテランのチャオブリーダーだと思った。
チャオに慣れたら、表情とか、ポヨとかで考えが読み取れるもんなんだな、とも思った。
すると、突然、ゴソゴソとボクのタマゴが動き出した。
「ん!?」
「あらら?」
パカッ。
タマゴが真っ二つに割れて、中からかわいらしいピュアチャオがでてきた。
「わぁ、かわいい.....」
その一言で、チャオはボクが親だとわかったらしい。
ボクの腕にのぼって、その中に入り込んだ。
「かわいいですねぇ、この子。あ、名前はどうします?」
「そうですねぇ.....」
(ピュア、純粋ってイミだよな.....)
(.....!)
「純、それにします!」
ボクがにっこりして、チャオを見つめながら言った。
純も、「気に入ったチャオ!ソレがいいチャオ!」とはしゃいだ。
その声は、かわいらしい、幼いかんじの声だった。
「そう、ピュアチャオにはぴったりの名前だわ......いいと思いますよ。」
女の人がそういうのと一緒に、ポエムも(猛烈に)うなずいた。
「じゃあ...純、よろしくね!」
「宜しくだチャオ!」
純がにっこりしながら言った。
「あ、そういえば....あなた、お名前は...?」
女の人がボクに聞いた。
「森野 木葉(もりの もくは。どーゆー名前じゃ!)です。」<「そうですか、私は波野 奈美と申します。よろしく。」
そう女の人が言う直後に、
じゃあ、モクハさん、宜しくチャオ!」と純が言った。
ちょうどその時、「72番さーん!」と、カーテンから顔をのぞかせた看護婦が待合室によびかけた。
「それじゃ...お先に....」
ボクは少し頭を下げて、奈美さんとその人のチャオに言いながら、診察&登録室に入った。