『十九話~試練5~』
ジィニーはチャオ達の先頭を大声で歌を唄いながら歩いていた。
歌う途中でたまに火を吐く。どうやら、凶暴な方の性格が出ているようだ。
「やっぱり、ジィニーもフロルに負けないくらい歌が下手だな・・」
ダークがぼそっとつぶやいた。それを聞いたフロルが振り返った。
「それってどう意味?」
「そのまんま。フロルは歌が下手だってこと」
「そんなこと無いもん」
「そんなことあるね」
「そんなこと無いもん」
「そんなことあるね」
「そんなこと無いもん」
ダークとフロルが不毛な言い争いをしていると、ジィニーが大きな炎を吐いていった。
「五月蝿い」
フロルとダークは小さくなって謝った。
「だいたいこの辺は湿っていて転びやすいんだ。よそ見してると転ぶぞ」
ジィニーはそう付け加えるとまた歩き始めた。
フロルが足元を見ると、所々地面が乾いて、炎で焦げた後がある。
「ありがとう、ジィニー。地面乾かしてくれてたんだね」
フロルはそういってジィニーに後ろから抱きついた。しかし振り落とされた。
「転ぶとぎゃーぎゃー五月蝿いからな。ま、わざと転ばせるのも面白そうだが」
ジィニーはそういって意地悪くにやりと笑った。
「むー。ジィニーのいじわる」
ジィニーは笑いながら前に向き直った。そしてまた歩き始めたが、少しするとまた止まった。
「止まるなら止まるって言ってよ」
フロルはやはりジィニーにぶつかり文句を言った。
「吸血コウモリがいる」
フロルはびくっとして後ろに後ずさった。もちろん後ろにいたチャオに当たる。
「ジィニー燃やしてよ」
フロルは言う。しかし、
「無理だ」
ジィニーはキッパリと否定した。
「何で?さっきまで元気に吐いてたのに」
フロルがジィニーに問いかける。
「(何か言い方がおかしいような・・・)」
ダークがつぶやいた。ジィニーはどっかりと地面に座り込んでいった。
「燃料切れだ。魔法も無理だぞ、魔法力が空だから。ということで、ダーク、お前やれ。俺はのんびりなのと交代して回復に専念するから。」
のんびりなのの特殊能力・自然回復=だんだん体力、魔法力などが回復する
「何で俺が・・・」
ダークが文句を言うと、
「ついでに~、魔法もとけ~なの~」
ジィニーが勝手にダークの魔法を解いた。
「(魔法力十分残ってんじゃん)お、おい、勝手に解くなよ!」
ダークはピュアのダーク・ノーマルチャオだった。
「ったく、しょうがないな・・・」
ダークは文句を言いつつ、手を前に向ける。
「<地獄の炎よ、我が手に集まり渦をなせ。そしてかの者達を焼き払え>ファイヤー・モーター!」
ダークの手から渦を巻いた炎が勢いよく吹き出した。そのまま目の前の道を駆け抜ける。少々の叫び声の後、何もしたには落ちていなかった。
「いつもながら~すさまじいのなの~ダークの魔法~」
「ほめてくれてありがとね」
ダークは周りから見てすぐ分かるぐらいに怒りのオーラをまとっていた。
しかしジィニーは軽くかわした。
「そんなに~怒っていると~転生できないのなの~」
周囲に沈黙流れ、一行は再び歩き始めた。
続く