最後の話
─召集状─ 最後の話
いっそう明るい昼間でした。
でも、その昼間の下の砂の起伏に、時折火があがったりもします。
もう、彼らは砂の上を飛び立って、空気を切って、
幸せのあった方角へ、向かっていました。
─「これが戦争への反抗の印になる」─
その言葉を信じて、真昼の飛行、そして飛翔─
ふっと、誰かの姿が、思いうかびます。
いっそう明るい昼間でした。
初夏の、めずらしく晴れた日、掃除したばかりの部屋に、雑誌をめくるぱらぱらという落ち着いた音が響きます。
開けっ放しのリビングのドア、一歩外に出れば、涼しげな廊下。
そこから、二つ、落ち着かない音がぱたぱたと聞こえてきました。
あの日と同じ青空でも、ここまで違うものなのでしょうか─
「もぅ、また走ってる」
階段が軋み、文句ありげな声があがります。
「レースにでも出るつもりかな」
「さあね─カラテのほうが絶対楽しいのに・・・」
「レースのほうが楽しいチャオもいるさ─」
ふたりは、もう一段階段を下りて、廊下を覗き込みます。
「陽斗、羽月─廊下が壊れちゃう」
─Fin─