beginning

それは嵐の日だった。
季節外れの台風、とでも言えるほど。その雨音が私の精神を少しずつ抜き取っていくようだ。
暗い。今は何時だろうか。腕時計でも確認出来ればそんな些細で単純で、しかし本能的に知りたい事を簡単に調べられる。……持ってくればよかった。
この部屋には時計という物が無いらしい。ならばその部屋から出て探せ、と言われても。鍵の掛かった鉄製の扉の開け方なんて鍵を使え以外にはない。
簡潔に言おう。私は閉じ込められたのだ。こんな、ボロ家の中の一室に。ただ自分だけとして。
何も喋らなかった。助けを求めようとも、私をこうした相手に挑発しようとも、何も言わなかった。言った所で無意味だ。
そんな絶望感が雨音と連合し、私の精神に着々とダメージを与えている。気力なんかもう無いかもしれない。
その一本の棒に背を預け、一つ溜息をつく。そしてたった一つの窓の外を眺める。それ意外には何もしようとしない。
殺風景と言えるに相応しく、窓一つ以外には、置物に化したかのようにピクリとも動かない私を除けば、何もない。
聞こえてくるのは、外から聞こえるうるさい雨音や雷鳴。少し前まで眠くなっていた私なのに、それすら子守唄にならないらしく、夢の中の光景も眺められなかった。



それとも、コレが夢なのだろうか。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第266号
ページ番号
1 / 17
この作品について
タイトル
小説事務所 「山荘の疑惑狂想曲」
作者
冬木野(冬きゅん,カズ,ソニカズ)
初回掲載
週刊チャオ第266号
最終掲載
週刊チャオ第287号
連載期間
約4ヵ月28日