№1
私の名前はユリ。現在人質(チャオ質とも言う)にされている。
……話が突然過ぎた。順を追って説明しよう。が、その前に一言。
今日という日から、私の全ては狂いだした。
「ユリ の 始まりの日」
私はとある研究会に所属しているチャオだった。
活動目的は「この世に起こった、または起こっている事件について知る」という、刑事や名探偵モドキの活動であった。
この研究会会長は今までSSに起こった全ての事件、特に有名人絡みの事件に興味を持つ(私曰くの)暇人であった。SSで有名な人と言えば、やはりソニックか。
それと……もう一つ、話題の存在があった。
「小説事務所」
常識ではないようなチャオ8名が所属している、所謂何でも屋のような物。つくづく何故小説事務所という名前なのかが気になるが、それは大して問題とする場所ではないだろう。
SSの市民では常識のような物だった。最初は意外とつっかかるような者もいたが、そんなの小説事務所が知られ始めた1年前の話だ。今では一つの常識と受け取られている。
警察関連の人物にあたっては、困った事務所だという意見が多いらしい。実際、とても普通とは思えない事務所だからだ、
まず、週に3日は必ず近所で爆音が響くらしい。それにやけに大きいハリセンのような音。何かの機械音声も響かれる。たまに銃声も聞こえるとか。
とにかく何が起こっているのかわからない場所なのだ。
勿論会長は多いに興味を持っているのだが、あまり健全な行為とは言えないだろう。噂にもあるが「小説事務所は死体の山」と言われた事もあるらしい。
が、そんな事も気にしないどころか更に興味を持つ会長だった。さらば、会長。あなたは変な人だった。別れの際にはこういうタイプの言葉を投げかけようと変な決意を示していた。
……さて。事務所の話題は置いておこう。話は朝の5時から始まる。
その時間帯に私は毎日起床している。そのまま、歯磨きと洗顔などいろいろ済ませた後、朝食を取る。それなりに規則性のある生活をしている。
この規則性のある生活を、研究会の友人は「男らしくないなぁ」なんて漏らしているが、私は女だ。一体何故そんな嫌味を言うのだろうか。
理由は簡単である。実は私の進化系というのはニュートラルのハシリタイプのハシリ二次進化。つまり、世に言うソニックチャオであった。その為、初対面の人には「少年」という印象を与えてしまう。
おかげで研究会に入った当初「それってつまり、オナベ?」なんて言われた。何を言うか! 断じて違う!
内心では心行くまでの自論を組み立てていたのだが、結局は「違うよ、間違われるだけ」とだけ答えた。しかし「嘘吐け」と1人呟いたチャオには、渾身の正拳突きを喰らわせた後、そのチャオの頭部を掴み、机に叩き込ませた。
その後、そのチャオからは常に距離を置かれている。話しかけると、ポヨを感嘆符かハートのどちらかに変え「はいっ! なんでございましょーか!」なんて反応をしてしまうようになった。私はどこかの帝王か!
……話が逸れてしまった。話を朝食に戻そう。
「……あれ?」
今朝、朝食は無いかと探った結果、何もなかった。珍しく昨日は忙しかった為、買うのを忘れていた。
昨日の夕食の残り物なんかは無いかと考えるが、昨日は研究会総員ファミレスで食事を済ませたのを思い出す。残り物を取りにファミレスへゴーなんてバカな真似は誰もしない。
仕方ないかと思いつつ、コンビニに頼る事にした。あまり気が進まない。コンビニ、ねぇ。ポヨを不満形に変えつつ、頼む相手もいない一人暮らしの身を面倒に感じつつ、コンビニへと出かけた。
この街は非常ににぎやかである。朝5時の薄暗さも無意味で、早起きが多い。私もそれに部類されるのだろう。
辺りを見渡すと、街の光景を眺めるのは許さんとばかりに人が渡り歩いていた。4時に起きたらどうなのだろうか。明日は4時に起きてみるか。そう考えつつ、コンビニへと入り込んだ。
コンビニの中も人やチャオが予想を少し超えた分だけいた。私と同じで朝食に困っているのだろう。そう考えながら、コンビニの奥へと入り込んだ。さて、何を買おうか。
朝食は普段パンで済ませる身なので、パンコーナーに移動し、種類様々なパンを眺めていた。ある意味、これだけのパンを作っている暇があるのなら警官に転職してくれ。会長がうるさい。
――その時、銃声が聞こえた。
周りにいた人は何だ何だと銃声の聞こえた方向に目をやる。チャオ達はみんな、ポヨを感嘆符か疑問符に変え、同じ行動を取る。
だが、私は見なかった。わざわざ興味を示さない。関わって何になる。そんな自論を持ち合わせていた。
幼稚園の頃、クラスメイトの男子と女子の一人が大喧嘩を始めた事があった。その際、総員が駆けつけて止めにかかったのだが、私だけはその場で本を読んでいたくらいだ。
「何で止めなかったの!?」と友達に言われた時「え? 何かあったの?」と答えたぐらいだった。それ以降も騒ぎがあったが、私は全くそれに触れなかった。いや、気付かなかった。
……話が逸れた。何でもいい。これでいいからとっととレジに――
次の時、私は襟首をつかまれ、ヒョイと誰かに持ち上げられた。
「コイツが殺されなかったら、とっとと帰れ!」
――はい?