エピローグ(後編)
年が明けた、ある日の夜。
皆が寝静まった頃に、一匹のチャオが洞窟を抜けて森から出てきた。
それはサイオンだった。
先日、チャオ達の会話から、自分が忘れていたものを思い出したのだ。
それは『冒険心』。
そう、彼が以前チャオの森を目指した時のような、まだ見ぬ世界への探求心。
この幸せにあって、サイオンはそれを忘れかけていたのだった。
それを思い出したとき、それは前にも増してサイオンを突き動かした。
そして今夜、チャオの森を後にし、旅に出ると心に決めたのだった。
サイオンは、かつて自分の歓迎パーティーが催された山の頂上に登った。
そこから飛び立とうというのだ。
「…………!? あれは…」
サイオンは祭壇の上に誰かいるのを見つけた。
それはチャオの護り神『CHAOS』であった。
『行くのか……』
「止めても無駄だ。 もう決めたことだ。」
『お前がどうしようと、私にはそれをとやかく言う権利はない。』
CHAOSはそう言うと、手に持った何かをサイオンに手渡した。
それは虹色のペンダントだった。
『お前に戻ってくる気があるなら…これを持って行け。
この島に張られている結界を無効化するペンダントだ。』
サイオンは黙ってそれを胸につけた。
月の光でペンダントが淡く光る。
……サイオンは森を見渡す崖に立った。
「さぁて、まずはテイルスの工房にでも行くか。
島のことを教えるって約束したもんな。」
そう言うとサイオンは星空に向かって飛び出した。
サイオンの姿はどんどん遠くなり、そして見えなくなった。
……その頃、森の中からその姿を眺めている3匹のチャオがいた。
カオスチャオの3匹である。
「アイツ、帰ってくるかな?」
ダークカオス・ハデスが言う。
「当たり前じゃないの。絶対戻ってくるわよ。」
ヒーローカオス・セレネが答える。
そしてライトカオス・アポロが付け加えた。
「そうだな。ここが…彼の帰るべき場所がなのだから……。」
・・・・・・・・・・
それから幾つもの季節が過ぎていった。
しかし、未だにサイオンは帰ってこなかった。
新たな冒険を求めて宇宙に行ったとか、海底に沈む幻の大陸を捜しに行ったとか、
根も葉もない噂がチャオの森を飛び交ったが、そんな噂も次第に聞こえなくなり、
サイオンがいたことも、もはや知る者の少ない昔話になってしまった。
彼の消息を知る者はいない。
しかし、きっと彼は今でも飽くなき夢を追いかけ、世界中を冒険していることだろう。
<終>
・・・・・・・・・・
こっそり掲載(苦笑)
今更最新号に載せるわけには行かないので………。
とりあえず終わりました。
今回の終わり方は歯切れが悪いかと思いますが、
いずれ別の小説で出演させる可能性が無くはないので、
そのために旅に出させました。
もっとも、書くとは限りませんがw
それでは、長らくのおつきあい有り難うございました!