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「僕ももうすぐ寿命なんだチャオ、だから、死んでしまうチャオ」
 チャオは、少し悲しそうに言いました。
「そうか、残念だね……。でも、君達チャオは、『転生』することができるんだろう?きっと、また生まれてくることができるさ」
 蝉は、少し声を大きく、明るい様子でそう言いました。少しでもチャオを元気付けてあげようとしたのでしょう。
 でもチャオは、さっきと同じく、少し悲しそうにこう言いました。
「ダメなんだチャオ。チャオのことを大切に想ってくれる人がそばにいないと、チャオは転生できないんだチャオ」
「……」
「ボクは誰か育ててもらっているわけでもないし……ボクのことを大切に想ってくれる人なんていないチャオ。転生できないチャオは消えていくしかないチャオ……」
「……」
「ボクは、それが怖いんだチャオ」
 そう言い終えたチャオの目からは、大粒の涙が止め処なく溢れてきます。抑えていた気持ちが、言葉と、そして涙とともに溢れ出ていきます。
 嗚咽が止まらないチャオを、蝉はしばらくの間、黙って見つめていました。そして、言葉をかけました。
「大丈夫。僕がいる」
 チャオは、嗚咽を止め、蝉の言葉に耳を傾けます。
「僕が、君のことを強く想う。君が消えてしまわぬように」
「……」
「君は、僕の短い人生に、貴重な『出会い』をくれた。僕は君にとても感謝している。僕は、君に消えてほしくない。……だから、泣かないでおくれ」
「……ボクも……」
「ん?」
「ボクも、セミさんに消えてほしくないチャオ。ボクもセミさんのこと、とっても大切に想うチャオ」
「……ありがとう。でも、僕は……」
「また会うチャオ!」
「え?」
「ボクもセミさんも、生まれ変わって、またココで会うチャオ。――約束チャオ」
「――うん、そうだね。約束しよう。またココで会おう」

「そのときは、友達になるチャオ!」
「そのときは、友達になろう!」



――それから、一年後。



 ある日のこと。灼熱の太陽から降り注ぐ日差しを浴びながら、雲ひとつ無い鮮やかな青空の下を一匹のチャオがお散歩していました。
「いいお天気だチャオ。最高のお散歩日和だチャオ」
 照りつける強烈な日差しもなんのその。とてもとても暑い日ですが、チャオはとてもとても元気です。
「セミさんもとっても元気チャオ」
 チャオは公園にやってきました。立派な木が何本も生えていて、緑が豊かなその公園では、沢山の蝉が鳴いていました。
 チャオはベンチに座り、目を瞑って、蝉の鳴き声に耳を傾けてみます。
 右から左から、そして、後ろからも。やかましいように聞こえるこの音も、不思議とチャオの耳には心地よく響きます。
「……」
 チャオは、ベンチの背もたれから身を乗り出して、自分のすぐ後ろで鳴いていた蝉を見つけて、挨拶しました。
「セミさんセミさん、こんにちはチャオ」
「今日は、チャオ君」
 話しかけられたセミは、一旦鳴くのを止めて、チャオの挨拶に答えました。
「……」
「……」
 ところが、挨拶が終わると、二人ともお互いを見つめて、黙りこくってしまいました。二人の間に、沈黙が流れます。
「セミさんセミさん」
「なんだい?」
「ボクたち――前にどこかで会ったことがないチャオか?」
「不思議だね――実は僕も、そんな気がするんだ」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第284号
ページ番号
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この作品について
タイトル
~蝉の転生~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第284号