仕事は少ない方がいい。
できれば、働いていないという状態に近ければ近いほどいい。
それでもって、収入が多ければ何も文句はない。
ただし、0に近ければそれはそれで御免である。
あと、できれば楽なやつがいい。

そんな感じで、彼女は非常にマイナーな分野を専門とした研究者になった。
仕事が忙しくなるのは、ある特定の期間のみで、後の仕事は結構楽である。
それでもって、収入は結構良い。
正直言って、勝ち組である。
そう彼女は考えている。
彼女の研究分野はずばり――

(長いタメ)

――チャオ聖誕祭期間中チャオコンの妄想によって生じる異次元空間への時空の歪、である。
軽く、用語を説明しつつ紹介すると、このような感じになる。
チャオが発見されたといわれる年末のとある時期(この時期にチャオ聖誕祭というイベントが局地的に行われる)に、
チャオコンと呼ばれる異常なまでにチャオを愛する人々(ロリコンのようなもの)がチャオの妄想することによって生じる、摩訶不思議なパワー(これをチャオ妄想力と呼んでいる)
が通常の5倍ほど発生し、それによって時空が歪む。
そして、そのありもしない次元から妄想の産物(架空のチャオなどである)がこの世に足を下ろす現象が起きる。
彼女はそれを研究し、そのメカニズムを解き明かすことによって、
到底実現不可能なもの(義理の姉が突如家にやってくるなどというイベントが誰にでも起こる日常等)を妄想の産物として実現させることを可能にさせようとしているのである。

そして、今はまさにそのチャオ聖誕祭期間。
国家権力や金、その他もろもろによって、買収した、時空が歪みやすい土地にて、彼女は研究を進めている。
割と、都合の良い設定である。(しかしそのことに気づいているのは今のところ彼女だけである)

「大変です、大変です」
「なんですかワトソン君」
「ワトソンじゃないです。それよりも、時空の歪から変なのが出てきました」
「変なのって、変なの以外が出てきた例は無いのですが」

ちなみに、今まで出てきたものの一部を紹介すると、こんな感じである。
メイドチャオ(ただのコスプレである)
ふくらむチャオ(フーセンガムのような感じである。しかし、とある事情で今はもういない。追求してはならない)
頭の上に浮いているやつがやかんのチャオ(水を沸騰させようとして加熱した結果、沸騰する前にチャオが蒸発した)
とまあこんな感じで妄想の産物なのでまともなのはいない。

「で、何が出てきましたか」
「青いロングヘアーでランドセルを背負った小学校1年生くらいの女の子です」
「なるほど、ついにチャオから離れたわけですね」
「全く、ロリコンなんていうとんでもない変態のチャオコンもいるものなんですね…」

ピキーン
彼女の中で何かが弾けた音である。

「ところで君はチャオコンでしたっけ」
「え、ああ、はいそうですが」
「ではチャオの可愛いところを言ってみなさい」

突然の質問に青年は戸惑う。
しばらく思考してから、言う。

「ぷにぷにしているところとか、小さい体とか、あと無邪気な仕草。そこらへんが特に可愛いですね」
「言いましたね?言いましたね?」

え、地雷踏んだ?
青年はそう不安になる。
ちなみに青年のその予感は結構的中している。

「ぷにぷにしていて、体が小さくて無邪気でかわいい仕草をする幼女のことを可愛いと思って何が悪いのですかこの青二才。そもそも人間というものは年を取れば汚れていくものです。今、君がしたように他人の価値観を否定することで自分の立ち位置を上にしようなんていう姑息な手を使うようにもなってくるのですよ。可愛いのだから愛したって別にいいじゃないですか。それを少数派だから、その類の人間の一部が犯罪を犯したことがニュースになったから、などというような理由でいかにも変態のように扱い、否定することはあってはならないと思うんですよ。むしろ、他人が何故、愛すほど可愛いと思うのかを調べ感じ教わり理解することによって自分の中の世界を広めていくことこそが大事だと思うんですよね。だって、幼女ですよ?可愛いじゃないですか。あの、悪意が木っ端も感じられない言動に加えそれをそのまま表現したかのような顔。見ているだけで心が洗われますね。私も死ぬまであの幼女達のように、心に汚れのないことが顔にまで出てくるようなそんな人であり続けたいと思います。あなたはそのような心を持った人間を変態と言って、あたかも人間ではないかのように否定するのですか」
「あなたもそうでしたか」

そう言いつつも青年は内心引いていた。
そして、彼女が毒舌家でなかったためにこの程度で済んだことに感謝していた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号
ページ番号
1 / 3
この作品について
タイトル
聖誕祭で苦労する人
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号