第二話『小さな冒険者』
闇に包まれたエスピスの街で、数十のチャオの卵が孵化しつつあった。
初めて世界と言うものを見たチャオ達。そのチャオ達に今のエスピスは、どう見えているのだろうか。
そんなチャオ達の中、訝し気な顔を覗かせる一匹のチャオがいた。
このチャオの名は、ドビュー。彼は、転生によりこの世に二度目の生を受けたチャオだった。
チャオには、転生前の記憶がわずかに残っているらしい。
ドビュー「此処は何処だ?」
ドビューには、慣れ親しんだエスピスの記憶と、あまりに大きな衝撃を受けたアス軍の記憶が、脳裏に刻まれていた。
ドビュー「この闇は一体……?……っ!まさか、アス軍が……」
彼は以前、アス軍に対抗すべくエスピスが築き上げた、アーツ隊の一員だった。だが、彼にはその記憶がない。
ドビューは気付いた。街のチャオ達が少ない事に、そして大人のチャオがいない事に。
チャオには、初めて見た者を自分の親、あるいは自分に必要な者だと認識する、と言う本能があるらしい。そして、チャオが初めて発する言葉は、自分の名前。
ドビューに一人のチャオが寄り添って来た。
???「…くろー、ど」
ドビュー「お前は、クロードって言うのか。親を亡くして可哀相に……ここのチャオ達、みんながそうなんだよな……(なんとかしないと)」
その時、ドビューに新たな記憶が蘇る。
ドビュー「(……はっ!クロード?まさか!)クロード大佐でありますか?私です!ドビュー少尉であります!」
ドビューに蘇りし記憶は、自分がアーツ隊に所属していた頃のものだった。
だがクロードからの反応はなかった…
ドビュー「そうか。大佐の船はアス軍から大ダメージを受けていたからな。記憶もほとんど残っていないのかもしれない…」
クロード「どびゅう…あそぼ」
ドビュー「遊ぼ、か。あの大佐がここまで無垢になるとは」
クロードは大佐というだけあって、部下にとても厳しかった。
ここまで思い出して、一気に記憶が戻って来た。
ドビュー「(…っ!そういえばオレ達の少隊は、オスラドにある伝説の…伝説の…くそっ!思い出せない。オレ達は、それを使ってアス軍を止めようとしていた。)……オスラドに行こう…」
ドビューは、自身でも気付かぬ間に呟いていた。
ドビュー「(仲間を集めよう)ピィー!」
彼は口笛を、エスピスの街に響かせた。
蘇った記憶が、口笛はチャオ達を呼び集める事を、教えてくれたから……
続