ろくでなしのチャオの話
ろくでなしのチャオがいました。
彼は生まれたときから、ろくでなしでした。
何せ、愛されたら彼は死ぬのです。
愛されなかったら、そのまましつこく生きるのです。
ろくでなしのチャオがいました。
最初に彼は1人の青年に育てられました。
彼は優しい男でした。
チャオは彼が嫌いで溜まりませんでした。
彼が自分を可愛がる…殺そうとしていると思ったからです。
それは偏見です。ですが、彼はろくでなしなのです。
それが分からないのです。
しばらくして、青年は事故で死にました。
チャオは喜びました。そして、すぐに転生をしました。
ろくでなしのチャオがいました。
季節が代わり、彼は暖かい場所が欲しくて溜まりませんでした。
彼は1人のおばあさんに引き取られました。
そこには暖炉がありました。おばあさんの温もりもありました。
でも、彼は暖炉の方が好きでした。
おばあさんの温もりは彼には分かりませんでした。
彼はろくでなしなのです。生まれつきの、ろくでなしなのです。
おばあさんは死にました。彼はまた生き返りました。
ろくでなしのチャオがいました。
彼はもうどこにも住みたくありませんでした。
自分の生まれつきのろくでなさにようやく、気づいたのです。
でも、彼はろくでなしなのです。
それに気づいても、彼は1人でいるしかなかったのです。
それが彼の「ふるさと」なのです。
それしか、彼にとっては「ふるさと」にならないのです。
ろくでなしのチャオがいました。
あるひ、彼のふるさとに、一匹のチャオが来ました。
女の子のチャオでした。
彼女は別に何を言うわけでもなく、彼の所に住み着きました。
彼は最初、彼女が嫌いでした。
むしろ言えば「食わず嫌い」みたいな感じでした。
しかし、彼女はいっこうにそんな素振りを見せません。
ただただ、彼女は笑っているだけでした。
彼はだんだん何かがキエテイク感じがして、
だんだん何かがウマレテク感じがしました。
ろくでなしのチャオがいました。
彼は記憶にある愛し方がありませんでした。
彼はウマレテク何かをどうしようかともがきました。
試しに花をあげてみる事にしました。
それは雑草と呼べるどこにでもある花でした。
彼はろくでなしなのです。そんなことなど分からないのです。
でも、彼女はそれをもらってやっぱり笑いました。
もしかしたらそれは彼女のいつもの顔なのかもしれません。
生まれつき、笑顔なのかもしれません。
ろくでなしのチャオがいました。
ろくでなしな彼なのです。
彼は彼女の笑顔に素直に喜び始めました。
彼は毎日違う花をあげました。
もちろん、彼はろくでなしなので、その花は雑草ばかりです。
もちろん、彼女は笑いました。
もちろん、彼は喜びました。
そして、長い日々が過ぎました。
二人の日々は変わりません。
何かが変わっていても、ろくでなしなので、彼には、多分、
分からなかったのです。
ろくでなしのチャオがいました。
ある日、彼は急に力が抜けたようにばたりと倒れ込みました。
彼女の笑顔が消えました。
でも、彼はろくでなしなので、ろくでなしなので、
自分は彼女に嫌われたかと思いました。
彼はショックでした。
彼は力を振り絞り、彼女を突き飛ばしました。
彼はろくでなしなのです。
そして、彼は最後までろくでなしだったのです。
彼は眠りました。いつもは二人で寄り添って寝ていました。
今日だけは1人でした。
そして、彼はもう目覚めることはありませんでした。
ろくでなしのチャオがいました。
彼女は突き飛ばされた後、笑顔が崩れていました。
そして、戻らないまま、
彼がいた場所に座り込みました。
彼はろくでなしなのです。
死ぬということがどうなることかを知らなかったのです。
何故死ぬのか、その理由を忘れていたのです。
彼女の気持ちが、分からなかったのです。
彼はろくでなしなのです。
ずっと、ろくでなしなのです。