第八話 敵将七人、ついに現る! <ミラ編:後>
カオス「あの世に逝く心の準備は整ったか?」
ミラ「それは私のセリフですっ!」
睨みあう二人。静寂の時が訪れた。
先に沈黙を破ったのはカオスの方だった。
カオス「睨みあっているのも性に合わない。早く決着をつけてやろう。」
ミラ「望むとこr・・・」
カオスの動きは先程と比べ物にならないほど速かった。
ミラの言葉が言い終わらないうちに、カオスはミラの背中に手を当て、呟いていた。
カオス「カオス・・・インパクト。」
ミラ「なっ・・・」
ドゴォン・・・
鈍い地響きが辺りに響いた。
ミラは、あの一撃のみで遥か10m先に吹き飛ばされていたのだった。
悲鳴をあげる間もなく・・・ミラは静かに息絶えた。
―――――暗い暗い水の底。
ここはどこだろうか・・・?
ミラは、ぼんやりする頭で考えた。
ワカラナイ。
私の名前は・・・?
カンガエルノモメンドウダ。
何も感じない。 何も考えられない。
そうだ・・・このままゆっくり沈んでいこう・・・
ミラは、そう考え、まぶたを閉じた。
―死ぬなんて考えるな。
誰・・・?
―死なんて考えるものじゃない。
聞き覚えのある、懐かしい声。
―ただ、生という道をひたすら突き進むだけさ。
ファング。そう、ファングだ。
ミラが一番信じる人。
そして、自分を救ってくれた人。
ファングと初めて会った時の言葉・・・それがこれだった。
―死なんて考えるもんじゃない。
ただ、生という道をひたすら突き進むだけさ。
ファングの言葉が辺りに響き渡った。
そして―――ミラは再びこの世に生を受けた。
カオス「もう奴が生き返ることは無いだろう・・・ここはもう用無しだな。」
ミラ「その発言撤回願う。」
カオスが驚いたのは言うまでも無い。
カオス「あれほどの攻撃を受けて・・・何故立っていられる・・?」
ミラ「私一人じゃ立ってられなかったよ。大切な人に救われたのさ。」
ミラは一瞬でカオスの横に立っていた。
ミラ「きっと、あなたの知らない感情が私を生き返らせてくれたのよ。」
ミラはそう言って一歩後ずさり、魔旋律を唱えた。
―生けとし生きるもの全ての神よ 命の源:水の神よ 生を奪う事を喜びとする者に天罰を下したまえ・・・
ミラ「これで終わりよ! 奥義 ―水神の怒り ヴィルスタ・アクオス!」
ミラから迸る澄んだ水は集まり、龍となってカオスを襲った。
カオス「なっ・・・俺・・・いや私は・・・」
水龍はカオスを飲み込み、上空からカオスを落とした上で消えていった。
カオス「くっ・・・」
カオスに凄まじい頭痛が走った。
それと同時に、ある記憶が蘇ってきた。
カオスの過去。そう、失われた過去が蘇ってきたのだった。
暗い実験室の一角で受けた改造・・・
標本箱から飛び出した日・・・
カオスは、自分の優しさというものを取り戻した。
カオス「私は・・・今まで何を・・・?」
ミラ「やっぱりね。あなたも記憶を失っていたんでしょう?」
カオス「あぁ・・・そうみたいだ・・・」
カオスは、ミラに向き直るとこう告げた。
カオス「私の記憶を取り戻してくれた事、本当に感謝する。もしよければ・・・」
ミラ「何?」
カオス「私も、君達に協力させてくれないか?」
ミラ「ぇ・・・?」
カオス「君には借りもある。それに、私はダークカオスを許せない。だから、この傷が癒えたころ・・・君達に力を貸そう。」
ミラはニコリと笑い、こう告げた。
ミラ「ありがとう。・・・でも、無茶はしないで。待ってるから。」
カオス「では・・・私は行くとする。また会おう。」
ミラ「じゃぁね。バイバイw」
2人は握手を交わした後、背を向けて歩き出した。
―ダークカオス様。
DK「何だ。」
密貞「報告します。Ω一号機カオスが、我等を裏切った模様です。」
DK「ふん・・・あの出来損ないか。仕方無い。あいつを投入しろ。」
密貞「かしこまりました。」
DK「しぶとい奴等め・・・」
ダークカオスは、歯軋りをしながら呟いた。
―――――ミラ編:完