第八話 敵将七人、ついに現る!<フローラ編・後>
フローラ「きゃぁぁぁぁー!」
コール「せめてもの情けです・・・苦しまずにあの世へ旅立って下さい・・・」
ザシュッ・・・!
一番大きな光の帯がフローラを切り裂いた。
フローラ「(私・・・このまま死んじゃうんでしょうか・・・? 嫌です・・・私には・・・兄さんを探すという・・・使命が・・・?・・・母さん・・・?)」
フローラの目に映ったのは、紛れも無い母の姿であった。
フローラがまだ幼い頃に母は病気でこの世を去った。
フローラの母「フローラ・・・あなたの失った記憶を・・・取り戻して差し上げましょう・・・その代わり・・・必ず兄さんを助けてあげてくださいね・・・」
フローラの母はそういい残すと消えていった。
今のは夢だったのだろうか?
いや、それは違う。 フローラはある事を思い出していた。
そう、昔の自分。 失われた過去。
全てフローラは思い出していた。
母が死んだときの事・・・父が家に帰らなくなったこと・・・それから、兄の存在。
兄さんはどんな人だったのだろうか? フローラは考えてみた。
それは、意外な人だった。
そう、コール。 コールは、紛れも無く、フローラの兄であったのだ。
フローラは心に誓った。
兄さん・・・改めコール兄さんを闇から救い出そうと・・・
コール「・・・・・・」
コールの目には光る物があった。
その時だった。
フローラ「ここで・・・倒れるわけにはいかない・・・兄さんは・・・私が闇から救ってみせる・・・!」
コール「・・・!」
フローラの目が一瞬輝いたかと思うと、光がフローラを包み込んだ。
フローラ「コール・・・いや兄さん・・・あなたは・・・私の記憶を奪った犯人・・・」
コールの表情が驚きから懐かしいような表情に変わった。
コール「・・・そういえば、そうでしたね・・・」
フローラ「私は・・・兄さんを恨んではいない・・・でも・・・兄さんは変わってしまった・・・」
コールが悲しそうな顔で言った。
コール「私もできる事なら妹を手にかけたくは無い・・・だが、フローラも変わってしまった。 聖なる光を操る者に・・・」
フローラ「・・・兄さんはもう昔とは違う・・・私にはどうする事も出来ません。・・・ただ1つやれる事があるとするならば・・・」
フローラは、真剣な目付きでコールを見た。
フローラ「兄さんに、昔の自分を思い出してもらう事です!」
―聖なる光を操るもの、架橋となりて遠き記憶を取り戻させよ 過去を失いし者を救いたまえ・・・秘儀 ファイラ・アルビダ・・・!
フローラの全身からほとばしる光は大きな光の輪となり、コールを包み込んだ。
コール「私の・・・失われた・・・記憶・・・?」
フローラは知っていた。コールも父に記憶を奪われていたという事を。
フローラ「兄さん・・・私と一緒に理想郷へ行きましょう?」
コールはしばらく黙っていた。 そして、沈黙を破り、こう告げた。
コール「それは出来ない。・・・いや、理由は言わないほうがいいだろう・・・」
フローラ「どうして・・・?」
コールは、すっと立ち上がると、フローラに背を向け、立ち去っていった。
コール「(フローラには言わないほうがいいでしょう・・・闇の世界に足を踏みいれた以上、元の世界では生きられないという事は・・・)」
フローラは、コールを止めようとは思わなかった。
ただ、立ち去る兄の背中を、いつまでもいつまでも見つめていた・・・
―――――フローラ編:完