つづき。

ご主人様は、事も無気にそういって、廊下へ軽い足取りでかけていきます。スキップで。
そなちねは、呆然とした顔でその後を見ていました。
くすくすという笑い声をBGMに。
みんな、あんなふうにそなちねがご主人様に(もちろん、買い物に関して)負けたのが、おかしくてたまらなかったのです。お前ら、それでも友達かよ。つーか、ほとんど親戚だろ。
それと、その呆然とした表情も、かなりウケています。うっわー、非情だなぁ。
こっそり横からデジカメで写真を撮って、パソコンのほうへとかけていったチャオもいましたし、その表情から明日のそなちねの運勢を占っているチャオもいました。

まぁ、それはともかく、ご主人様がちいさなお財布片手に、戻ってきました。ツーステップで。
相変わらず無表情です。そなちねみたいな笑える表情出してみろよ。
「じゃ、ヨロシク。商店街の、いつものパン屋さんで、食パンひとつね。お金は100リングだけしか余分には入れてないから。」
ご主人様は、軽くそういって、ベットと机とイス、それにパソコンしかないオフィスへ、舞い戻って行きました。ワルツステップで。

ま、とりあえず、お買い物だけはできるのですから、良しとしましょう。
ソナチネは、強気に玄関のドアをひらけます。
朝の空気をいっぱい吸って、そこら辺を飛ぶ雀にケンカを売って、そこら辺を散歩する犬のテリトリーである電柱に砂をかけて荒らしたら、準備OK。
生娘大将チャオの異名を持つ、そなちねの出発です。

はねるような足取りで、首からお財布をさげて、そなちねは偉そうにあるきます。
背中が、そこら辺のチャオたちに、「頭が高い」と言っています。
でも人間は苦手。井戸端会議中のオバチャン達は避けて通っています。
そんなときは、そなちねの頭が高いサインは消えうせます。
だって、昔、近所のチャオからビーダマをぶんどったら、すっごい怒られたんですから。
パン屋さんのある商店街へは、たったの5分。
でも、そなちねは10分ぐらい歩いているような・・・

「ここね!ここだわ!!いつもパンを買いに来てるのは、ここよね!!」
そなちねは胸を張って言いました。一度もきたことの無い、隣町の商店街のまん前で。
出発してから、一時間経過です。素晴らしい。貴女は、最高のボケチャオです。チャオの鏡です。
それはともかく、そなちねは、その見知らぬ商店街へ突入していきました。

はっきり言って、斜面の町の商店街より、ちょっと小汚い商店街でした。
そんなのお構い無しに、そなちねはとてとてと歩き回ります。
そして、そなちねは顔を上げました。
パン屋を─いえ、そなちねが見つけたのは、オルゴール店でした。ちぇっ。

そのほこりっぽいショーウインドウを、覗き込んだとたん、ソナチネの目に、buyの文字が浮かび上がります。
そなちねのbuyの3文字の先には、オルゴールがありました。オルゴール店だもんね。
しかも、悪趣味です。
蛇に、ルビーばっかりがぎらぎらにちりばめられていて、他はぼたん色しています。いわゆる、どきついショッキングピンクです。よくこんなのショーウインドウに出したなぁ。
しかも、そなちねときたら、ぽくぽくとした歩みでお店のドアに吸い込まれるように入っていっちゃったじゃないですか。おいおい、買う気ですかい。趣味悪いなぁ。

「じゃあ、3000リングになります。」
そなちねは、届かないはずのカウンターにしがみついています。
ジャンプのスキル上げたとか。
それはともかく、そなちねの手には、ちょっと軽くなったお財布と、宝石箱のようなオルゴールがありました。
幸せそうな顔で。
そなちねは、もと来た道を戻っていきます。
もちろん、パンのことなんか忘れて。
虫の鳴くお腹も、ずっと無視して。

ん?なんでお金が足りたのかって?
もちろん、ご主人様は、そんなそなちねのために、最初から5000リング入れてくれていたのでした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第129号
ページ番号
2 / 2
この作品について
タイトル
おっちょこちょいのおつかい
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第129号