おっちょこちょいのおつかい

おっちょこちょいのおつかい

ここは小さな斜面の町の、ちいさな郵便屋さん。
そこのチャオガーデンにすむ変わった色をしたチャオ、そなちねは、お買い物が大好き。
ぷちているには負けないほど朝早くに─とはいかないみたい。
今日は、そなちねは、ちょっとお寝坊してしまったみたいです。
おひさまは、チャオガーデンの遥か上空にのぼっています。

とてとてと廊下を進んで、そなちねはダイニングへ向かいました。
廊下の一分の狂いも無い、携帯電話のような時計は、もう朝の9時をさしています。
そなちねはダイニングからやってくる、ウインナーの焼ける匂いをたどるようにして、
とてとてと廊下を進みます。
視界が開けて─廊下とダイニングを区切るドアをひらけました─ダイニングに到着です。

みんな、チャオ用の低いダイニングテーブルについて、朝ごはんを待っていました。
「ずいぶん、遅かったね。」
何匹かのチャオたちが言いました。
そのうち3匹は欠伸して、1匹はついでに隣のチャオに噛み付いてしまいました。
「そなちねが寝坊した~!!ねーぼーうーしーたーーーーーっ!!」
「ぺすかとーれ、止めなよ・・・」
そなちねをからかうぺすかとーれを、あきれたようにライトカオスの純がたしなめます。
そんななかを、そなちねはてれくさそうに笑いながら、自分のイスによじのぼるようにしてすわりました。

しばらくすると、ご主人様がウインナー、じゃなくて、ベーコンでした─と、パンがたくさんのったお皿を運んできました。
1、2、3、4・・・みんながパンをお皿にとっていくに連れ、大皿の上のパンは減っていきます。
5、6、7、8・・・そなちねも、パンを取ろうと手を伸ばしました。
9、10、11、12・・・あれ!?そなちねのぶんのパンが、ありません。
もう一度、1、2、3、4・・・やっぱり、足りません。
みんなのお皿にはパンがのっているのに、そなちねのお皿はベーコンだけ。
木の実で味付けした、ベーコンだけ・・・
いくらそなちねの大好きなジャムでも、さすがにベーコンにはつけられません。
問題は、そこじゃないんだけど。

「モクハさん、モクハさ~ん!!パンが足りないよぉ~!!!」
そなちねは大声でご主人様を呼びました。ゾウみたいな大声で呼びました。
「あっれ~?ごめんね、他にあったかな・・・」
そういってご主人様はパン入れをがさごそとさぐりますが、
がさごそとか言う前に、そのがさごそと音がするはずのパンは、一枚もありません。残念~!
「参ったなぁ・・・じゃあ、ボク、急いで買ってくるから─」
そこまでいって、ご主人様はあわてて自分の口を押さえました。
それと同時に、そなちねのつぶらな瞳も、キラリと光ります。黒真珠に近い光で。

「買ってくる」は、禁句です。
その言葉で、そなちねの本能が、起動してしまうのですから。

ヤバイ!!
ご主人様はとっさにそう思って、
「ぼ─ぼくだけで、行ってくるから、お留守番しててね・・・」
と、静かに言って、なぜか抜き足差し足でお財布を取りに行きま─
「まって!!」
まだ、一歩も歩いていないというのに、ご主人様に、そなちねがとびつきます。
3メートルほどの距離を、あの某ハリネズミにも負けないスピードで走ってきたのです。
こんなにハシリのスキル上げた覚えはないぞ!?
「あーたーしーもーいーかーせーてっ♪」
とびっきりの笑顔で、そなちねは言います。
「でも・・・・急いでいかなくちゃいけないから─」
そなちねは、さらに笑顔をどきつくします。顔真っ白で口紅真っ赤のおばちゃんのごとく。
でも、今日は負けるもんか。
いつまでもこんな笑顔に負けて、時間を食ってるボクじゃないぞ!

ご主人様は心を鬼にして、
「なんでもいいから、お留守番しててね!」
と言って、そなちねを下におろそうとしました。
しかし、そなちねは、せいいっぱいの力で、ご主人様の肩にしがみついています。
こんなにチカラのスキル上げた覚えはないぞ!?
そんなソナチネにご主人様は躍起になって、ズボンのポケットから、一握りのリングを取り出しました。
そして、ぐいっと、ぽよぽよのソナチネの手に、そのリングを押し付けました。
そなちねのポヨが、とっさに?になります。
「ホラ、そんなにいきたいんなら、おつかい頼むからさ。ちっちゃいお財布、とってくるから待っててね。」

つづく。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第129号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
おっちょこちょいのおつかい
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第129号