プロローグ

俺とラスの事件簿「プロローグ」


朝。
俺はいつものように相棒のナイツチャオ、ラスを連れて一階の食卓についた。

「こう、はやく、ごはんー」

ラスが大きな羽をパタパタさせて騒ぐ。
俺はパンをトースターに入れながら、黄色いチャオの実一個をラスにあげた。
ラスはハートマークを出すと、がつがつと実を食べ始めた。
俺はため息。

「おまえさー、せっかく『日本一頭のいいチャオ』に選ばれたんだから、もうちょっと品よくならねーと、嫁さんこねーぞ」

そうなのだ。ラスはチャオの中では頭がいいらしく、言葉が話せる。
冗談半分で応募したTV番組『日本一頭のいいチャオ決定戦』で、なんとチャンピオンになっちまった。

「あんとき、かわいいジュエルチャオがいっぱいいたよなー」

「? ぼく ふつうのちゃおが いいな」

かーっ、偉そうな口たたいて。

実は俺がジュエルチャオを直接見たのは、あのTV番組のスタジオがはじめてだった。
ジュエルチャオはその名のとおり、宝石の色をしたチャオのことで、俺みたいな一般市民には全く手の届かない、超高価なチャオなのだ。
大物レベルの政治家や医者、株主、皇族クラスでないともっていないといわれている。

たしかにチャオはただでさえ、金がかかる。チャオはきれいな空気と水がないと育成できないため、国際チャオ保護団体で指定した空気清浄機と、浄水器、その浄水器使用のプールがそろっていないと、チャオを保護してはいけない法律になっているのだ。

俺んちは、幸い親父が生物学者だから、そう金持ちでもないが、たまたま環境が整いやすかったし、生物学者ということもあってチャオの育成資格も習得しやすかった。

「・・次のニュースです。昨夜未明、東京M区の高木開発社長自宅に強盗が入りました」

え?

焼きたてのトーストにマーガリンをぬる俺の手が止まった。
実を食べ終わったラスがテレビをつけたのだ。

高木開発って・・大手総合商社だろ。あの決定戦の時スタジオにいたよな。そのあととり息子が。
たしかアクアマリンのミズチャオでオールSって自慢してた・・。

「犯人はジュエルチャオ1匹をもって逃走中。他に被害はありません。警察の調べでは、犯人は高木氏ら家族全員が留守の午後19時、庭の窓ガラスを割って侵入したもよう。
警報にかけつけた警備員二名は目撃しておらず、その間15分程度ということから、犯人は内部事情に詳しく犯行は計画的との見方が強いようです。」

うわっ・・マジで・・あのアクアマリンチャオが盗まれたのかよ。

にしても、すげー馬鹿な奴がいるんだなー。チャオ犯罪はめちゃ罪が重いって話だぞ。

なんてったって今やチャオのおかげで世界の平和が保たれてるっていってもいいくらい、チャオは世界各国で愛されてるんだ。
友好条約の時、お互いの国のチャオを交換しあったり、繁殖させたりして、「チャオは平和の使者」とまでいわれてるんだぜ。
日本の警察の面子にかけて、必死で犯人つかまえるだろーなー。
でなきゃ、日本は世界から総スカンくらうぜ。

つーか、これって日本初のチャオ誘拐事件じゃんか。

なんの目的で?いくら高価なチャオといっても身代金目的とは思えないし。ありえないとは言えないが。

それともマニアックなファンの仕業か?
ただのいやがらせなのか?
警察も報道公開したりして、あのチャオ、無事だといいが・・・。

俺がパンを食いながらTVに見入ってると、

「こう、がっこう いくじかん」

んげっ。
しまったー。

「ラス、いい子にしてまってんだぞ。んじゃな」

俺はラスに軽く手を振ると、カバンを肩にまわして走って家を出た。

「こう、いってらっしゃーい♪」

ラスはテラスごしに、坂を駆け下りる俺の背中に手を振り続けていた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第117号
ページ番号
1 / 9
この作品について
タイトル
俺とラスの事件簿
作者
ピース
初回掲載
週刊チャオ第117号
最終掲載
週刊チャオ第119号
連載期間
約15日