ページ2
おまけにいつもよりも眠れなかったときたもんだ。
床で寝ていた俺はいつもよりも一時間ほど早く目覚めてしまった。
「すー…すー…」
俺のベッドで寝ている方はかなりよく眠れているようである。ふざけんな。
それから一時間後。いつもなら俺が起きる時間に「ふあ…」と、やつは起きる。それにつられてチャオの方も起きる。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよー」
これは毎朝の習慣なのだろうか?とりあえず俺は置き去りにされているようだ。
「あれ?どこで寝てたの、君?」
「…床だが」
「え、ベッドとかないの?」
そこにある。そこにあるけれどお前が寝ていたから使えなかったんだろうが…!!
それに気付いたようで、彼女は「あ」と声を漏らす。
まあ、謝罪の言葉があれば許してやらないわけでも…
「別に一緒に寝ても良かったのにー」
誰か俺を助けてくれ。この際誰でもいい。虫でもいいから。
「それーとってこぉーい」
で、それから朝食をとって俺達はチャオガーデンに来ていた。
やつは俺のチャオと遊んでいて、俺とグレートはガーデンの端でその様子を見ながら話していた。
「普通、チャオ同士が遊んでいて人間同士で話している構図になると思うんだけどな」
「ま、こういう構図になることもあるでしょう」
「…そうだな。よく考えてみれば飼い主同士、飼われている同士っていう構図だもんな」
「い、いや、小生は飼われている側です…」
「あれ?そうだっけ?」
どう考えてもこっちの方が飼い主っぽいんだがなあ。
「ところで、お前らはどう行き先を設定してここに来たんだ」
「ああ、やはり気になりますか」
「それがわかればどうにかして帰る方法がわかるかもしれないしな」
「しかし、お嬢様は知られたくないようでして…」
どうやら、とても人には言えないことらしい。
そうか、それなら仕方がないな。
…なんて諦める俺ではない。残念ながら。
相手はいくらしっかり者に見えても、「お嬢様は知られたくない」という情報を聞いてもないのに漏らすほどうっかりしている。
つまり、聞き出す事など容易である。はずだ。
「まあ、やつにはお前が教えた事は言わないでおいてやる。帰る方法を導き出すためだと思って、教えてくれ」
「はあ、そうですか。それなら…」
結果、俺の勝ち。試合時間約十秒。
「『運命の人のいる場所』でございます」
「は?」
「いえ、だから、『運命の人のいる場所』と設定して転送された場所がここでございます」
これは真面目に言っているのか、それともギャグなのか。
あれ?俺ひょっとして騙されている?罠にはめられちゃってる?
相手はよほどの切れ者か…!?いやいやまさか。そんなはずはそんなはずは。
「それは誠か」
「はい。誠にございます」
そんなにアバウトな指定でも転送されるのか。
ということは、待てよ。もしかしたら・・・。
「おいお前」
「ん?なーにー?」
「本当に自分のいた住所がわからないのか?」
「んーと、長すぎてうろ覚えなの」
「そうか。この際だ。家に近い多少名の知れた場所はあるか」
「え?なんで?」
まあ、いきなりそんなこと言ってもわけがわからないか。
急がば回れ。説明から先にしよう。
仮にこいつらが本当にあんなアバウトな指示でここに着いたとしよう。
すると、最低でもその程度の指示さえあれば転送されることになる。
本来ならその手の人がややこしい設定をしてしっかりと転送ができるようにするのだが、
最悪そんな感じの設定でも転送できるようだ。勿論しっかりとそこに着く保証はないだろうけれど。
そして少しでも正確さを増させるために転送先を名の知れている場所に設定するわけである。
そうすれば、きっとこいつらは元の所に帰ることができるだろう。
夜。飯も食い終わって、風呂にも入った。
あいつらはもうここにはいない。無事に帰れただろうか。
時計を見る。よし、いつも通りだ。
いつもと変わらない。今から部屋へ行って寝れば、それはもう完璧と言えるほどに。
だが――
「すー…すー…」
俺の目の前には昨日と同じ光景があった。
「なんでお前がいるんだっ!?」
「ふわ・・・」
やつは昨日とは違って飛び起きず、ゆっくりと起きた後に目をこする。
俺はもう一度訊く。
「なんでお前がここにいるんだ?」
すると彼女はとびきりの笑顔で言うのであった。
「だって――――」
俺とお前が運命のチャオライフ
――完――