最終話
「俺とチャオ」
「何かの間違いじゃ??」
口では冷静に答えたものの、頭の中はパニック状態だった。
引き取りに来たって・・・あのチャオを?あの箱に入っていたチャオを??
「いえ、すみません。こちらに伺う前に、貴方の携帯電話に電話したんですが、電源を切られてしまって・・・・。」
「・・・・。」
あの時だ。あの、チャオがケータイの電源を切った時・・・。それがこの電話だったのか・・・。
「で、それより、何で俺の家にチャオがいて、何で貴方が引き取りに?」
俺がそう聞くのも無理は無い。
俺が言ったように、何で俺の家にチャオがいて、何でそのチャオをどういう関係でこの人が引き取りに来たのか。
大体、何で今頃になって引き取りに来たのだろう・・・。
と、何がどうなっているのか謎だらけだからだ。
「説明します。・・・一ヵ月位前に、あるチャオが行方不明になってしまったんですよ。
そのチャオが、いま君の手元に居るあのチャオ。あのチャオは、元の主人の家をこっそり抜け出し、外へ出て行ってしまったのです。その主人というのは私なんですが・・・・。」
・・・・。この人があのチャオの元の飼い主だったのか。
「どうぞ、話を続けてください。」
俺は小さく言った。
「・・・そして一人で外へ出た事の無かったあの子は、道に迷って、とうとう家に帰って来なかったんです。
あの子はきっと、その時貴方の家に入ってしまったんだと思います。本当にすみません。ご迷惑をお掛けしました・・・・。」
そうか、だからあの時チャオが家に居たのか・・・。あの段ボール箱は俺の家のだったしな・・・。
「いえ、良いんです。俺も、チャオと一緒に居る時、大変だったけど楽しかったですから。・・・後、一つ聞いて良いですか??」
「どうぞ?」
「何で、俺のケータイの番号知ってたんですか?」
「え?ああ、それは、貴方のお友達に教えて貰ったんです。あの人、私の親戚なの。
『友達の家にチャオがいて、そのチャオがシャドチャに進化した』って言っていたので、もしかして・・・と思いまして。
あの子は、走るのが得意だったから、シャドチャに進化する可能性が高かったんですよ。
実際に貴方を街で見かけた時、抱いていたチャオは紛れもなく、行方不明になった私のチャオだったので・・・。」
「・・・・あ、今チャオ連れて来ますね・・・。」
・・・正直、複雑だった。チャオが元の飼い主にまた会える・・・って事は嬉しい。でも、俺はもうあのチャオに会えない。
とても悲しい気持ちになった。いつの間にか、チャオは俺にとって大切な存在となっていたんだ・・・。
チャオの居るリビングに着いた。チャオはまだ絵を描いていた。でも、俺が来たのに気付いた途端、さっとその絵を隠してしまった。
「さ、お前の元の飼い主が来てるぞ。」
そんなチャオをひょいっと抱き上げ、いつもより強く抱きしめた。