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「…おめでとうチャオ」
力を振り絞って出した声が、テレビの音にかき消される。
しかし、彼には届いているはずだろう。彼の声。思いが。
彼らはお互いがお互いを助け合う、そんな関係になったのだ。僕は…蚊帳の外だ。
病室の窓から、静かに飛び出した。
僕は…僕は…
やるせない。何もする気がない。
この世界には、依存してしまうものがいくつか存在している。
薬、生活習慣。チャオとて例外ではなかった。
彼は優秀であったが、家柄には恵まれなかった。
だからこそ、国が彼に僕を宛てたのだ。
ひとり立ちできるまで、という条件付で。
犬のようではあるが、それが僕の仕事だった。この世界でいう、パートタイムといったところであろうか。
社会を学びながら、仕事をこなしていたのである。
そして今、この役目を終えた。

しばらく空を飛んでいると、下から大きな泣き声が聞こえた。
泣きたくなってるのはこっちだ、と思いつつも、僕は下を見た。
まだまだ小さい男の子。3歳くらいであろうか。
かわいそうに、なってない親の元に生まれついたのであろう。今にも捨てられようとしている。
ダンボールに手紙とお金とその子を置いて、逃げるようにして車で走り去った。
食べ物は恐らくそこに留めておくため。だが、直感的に"捨てられる"とでも思ったのだろう。
こちらとて、直感的に感じるところがある。

今日は特別な日だ。
必要とされるなら、思いっきり手伝ってあげよう。
彼の発したメッセージは、通り抜けない。僕に届いているのだから。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第306号
ページ番号
5 / 5
この作品について
タイトル
Once in a Blue Moon
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第306号