11-滑稽な怪物-2

場所は移り変わり、屋根の上である。
動かなくなったチャオと、泣き疲れているチャオを抱き、怪物と別方向を見ている。
そう、人間クモがそこにいた。
だが、クモは隠遁をまったく気にせず、怪物ばかりを気にしていた。
島を壊されるのがイヤなのか。それとも、ただ単に強いから嫉妬しているのか。
クモも弱いワケではないが、強さには歴然とした違いがある。
機銃やchaoによる攻撃、それら全てが吸い込まれる。体の中はどうなっているのだろうか?
そんな疑問をクモも抱いているだろう。

じっとクモを見ていると、隠遁らと同じように屋根の上を歩いてくる集団がある。
人間に擬態しているクモに近づくと、一瞬だけクモである素性を見せる。
「クモが…一斉に降りてきた」
人間の死体を糧とし、個体数を増やし続けていたのだ。
30はあるだろうか。どれもが完璧に人間に擬態していて、顔も様々。
人間をこれほど知り尽くしている動物は他にいるだろうか。
チャオもどきどきしている。心臓の音が聞こえる。
「おきてたのか?」
隠遁がチャオに話しかける。
小さく頷くが、見ている方向は依然としてクモの方向である。
敵はまだいるかもしれない。怪物はそもそもなんなんだろうか。
黒みがかった白というか、雲のおかげだろうか。暗い。
白やグレーといった、そんな系統の色をしているだろう。その怪獣は、今度は下の方に水を放出している。

一般人、いや、参加者をも殺しはじめたのか?色んな思惑が頭を過ぎる。
だが、見てはいけない。行動してはいけない。クモから自分の身を護るためにも。
その時だ。かの方向から戦闘機がやってきた。
まるでハエの大群のようだ。そう、応援部隊である。
前列の戦闘機がいっせいに機銃を掃射する。
ものの見事に怪物に当たるのは良いが、そもそもダメージが無い。
少しは常識外のことも真剣に考えたらどうだと思うが、長くは見てられない。

クモが糸を張り、その上を歩き下の道に降り始めた。
単純に考えて目立つのだが、気にしないだろう。奴らには人間のパーツが控えている。
滅多なことで死なない。それどころか、相手のパーツを組み込んでより強力になるだろう。
怪物へ…敵対意識を持ったのか。
じりじりと距離を詰める。
潰しあってくれれば本望だ。が、真にどうなるかはわからない。
他に何か思惑があるのだろうか。隠遁たちは苦悩した。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第250号
ページ番号
40 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日