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「一つの命が終わった」
そう言いながら、一人の男は呟く。実際は何人もの命が奪われているのに。
「騙されました、帰ります」じゃ済まされない問題の下、一つの命が消えていった。
どこまでも広がる、運命の連鎖はここで一つ途切れた。

現在。
「クモ」による被害・対策により、その島には誰一人と住まなくなった。
航空機の航路はその島を少しも見えない空路を通る。
鳥は人間の手によりその島の上空を飛ばなくなる。
あの時の事件に関わった者は全てを知りながら、黙ってこの世を去っていく。
「クモが人間を乗っ取り、その人間がその島を乗っ取っていった」島。
そこに、人が集まりだした。
100名ピッタリの人々は、それぞれが同じような飛行機に乗っていく。
仲の良い人。友人間で来た者もいるであろう。
その手に握られている一つのチケットにはこう記してある。
「"クモ"の下 100名の内1名分」

「軽く説明を始めます。手元に資料が行き渡りましたら…」
集まっている100名はみな男であり、子供から老人までが集まっている。ちゃんとした人間だ。
一つの、人口の多めな国で"挑戦者"を慕った結果である。
条件は「男であり、自分にどんな物でもいいから自信を持てている」ことであった。
この島で行われること。それは「生命の失われない殺し合い」である。
棄権も可能であること・棄権の場合参加費を本部が負担することから、挙って参戦希望者が名乗りを挙げる。
しかも、勝者である条件に「指定時刻までに生き残っていれば何名であっても可」とある。
つまりは、かくれんぼのように生き延びれていればokであるという。
しかも、生命が失われないのであればと多少度胸のある人。それか、度胸が無いが友人間で来ようとする者もいた。
都合の良いことに、"二人以上で来ることを条件"にするボックスにチェックをすると自分かその友人のみが参加することは無くなり、その人含め友人全員が当選するか、全員が落選することとなっている。
だが、友人間の組の数は一桁。やはり、他力本願になりそうな人はできる限り却下する形を取っていた。
そんな楽な集まりにも、注意事項は存在する。
「持ち物は空の財布のみ・服装は何でも可」だ。
だが、これも生ぬるい。しかし、武器の禁止もここにはちゃんと含まれている。
金の買収もあると見て、それも禁止にするべく持ち物を制限。
各国に点在するこの島へと移動するための飛行機に乗る前に、隅々までチェックを行う。
とは言っても、服を脱がすことや行き過ぎたことまではしない。クリーンに行っている。
それから目隠しをし、飛行機に乗り"クモの島"へと100名が集まったのだ。
重要なのが、"多大な賞金を約束する"こと。金額を記載していないことから、文句があるのならいくらか上乗せを可能だという。
そして今、その100名に資料が行き渡った。
100名の周りには点々と黒服を着た男が囲んでいる。いずれも武装しており、いつでも虐殺可能であった。
土で固め、海上に作られた台場の上。特設とでも言うのか。
その上で行き来され、最終的に落ち着いた資料には上記のルールがもう一度確認のために記載されていた。
そして、募る際には書かれていない一文が書いてあった。
「この島で不思議な能力、"chao"が君たち100名に乗り移る。
過去を洗い出し、不思議な現象を起こすことができる。
既に"chao"は身に乗り移っているが、それに気付けば、その現象の起こし方や大まかな内容を知ることができる。
最初は"chao"が暴走してしまうが、その現象に気付きさえすれば説明が脳に伝達する。
"クモ"がもたらしたこの"chao"に感謝しつつ、殺し合いを始めよう」

しかし、会場は至って静かであった。
全員が必ず、その一文に目を向け考えた。それは確かであるが、静かに考えた。
元々、友人間の参戦希望であるボックスにチェックを入れていない人が大半であることから隣に人があっても聞かない。
余計な情を取り入れてはいけないこと。それは皆分かっているからだ。
そうでなくても、いろいろな理由の下黙っていた。
しばらくして、壇上の黒服が口を開いた。
「後ろの、駅の前をご覧ください」
その言葉で、海に向かって説明を聞いていた人たちは台場の上で方向転換。島の駅の方に体を向けた。
そこには、武装をした人に囲まれている一人の男が正座で座っていた。
「見ていてください」
そういうと、一斉に火炎を放射した。真ん中の男の皮膚は焼け爛れ、骨が露出する箇所もある。
その光景を見て目を背けたり、嘔吐することは異変とはいえないであろう。
空しく消えていく男の悲鳴が消えた頃、火炎放射は止まっていた。
男が元いた場所には何かわからないような"物体"があった。紛れも無く、先ほどの男であった。

しかし、しばらくすると男の体はどんどんと色が戻り始めた。

そのまま、どんどんと色が戻る。
戻るということは、皮膚も戻っている。とすれば肉もだろう。不思議なことに、服すらも治っている。
ほぼ全てが完治した状態になり、男は立ち、台場を向き直す。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第224号
ページ番号
1 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日