第一章 二話
暖かい やわらかい
でも 何かがおかしい…
Lost Memory 第一章 二話 名前
「うわぁ!」
目の前に大きな黄色いポヨがあって、倒れていたチャオはびっくりし、慌てて布団から起き上がった。
「お!目が覚めたか?いやー、目が覚めなかったらどうしようかと思ったぜまったく!」
拾ってきたチャオは嬉しそうに声をかける。
倒れていたチャオは状況がよくわからないようで、頭のポヨにハテナが浮かんでいる。
「ああ!ごめんごめん!オレはカイル!帰り道にあんたが倒れてたから、拾っただけの、ただの通りすがり。あやしいもんじゃないからさ!
で、あんたの名前は何て言うんだ?」
あわててカイルが状況説明をし、倒れていたチャオに尋ねる。しかし、返事は驚くべきものだった。
「…わかりません…自分が何をしていたのかもわからなくて…名前も…」
倒れていたチャオはそう言って俯いてしまった。
「まじで?!まさか、いわゆるキオクソーシツってやつ?!やべえじゃんか!う~ん…どうしよう?」
カイルはチャオに相談しようとするが、一番訳がわからないのはチャオ自身である。
「…すいません…俺、迷惑かけてますね…」
チャオは自分がカイルに迷惑をかけているからと、布団から出て、カイルの家の玄関に歩いてゆく。それをカイルはひきとめた。
「そんなことないって!困ってる人…じゃなくて、チャオを助けるのは当然だし?もちつもたれつ!だろ?オレは困ってるやつを放っておくほどハクジョーモノじゃないからな!」
カイルがにっこり笑わらいながら言った。チャオは困惑している。
「それに、スープを作りすぎちまってさ、オレだけだったら余るからさ、メシ食ってくんね?」
カイルが付け足すように言い、チャオはつい、ぷっと噴出してしまった。
何分後。
「ふーん?目が覚めてからのことしか覚えてないのか…」
カイルはきのこスープをすすりながら、チャオにたずねる。
「はい…以前はどこで何をしていたのかも…」
チャオは出されたスープを少しずつ口に含みながら、静かに答えた。
「それに、体のそこら辺にある擦り傷もどこでつくったのかもわからないんです。」
体中の擦り傷はカイルが引きずってかえってきたからである。カイルは冷や汗をたらしながら、無理やり話題を変えた。
「そ、それはそうと、名前考えないとな!いつまでも『あんた』じゃ呼びにくいし!」
「名前…ですか?」
「そっ!名前!名前は命の次に大事だからな!何ていっても、自分の存在の証だから。」
「存在の証…なんか、名前って重いんですね…」
「そりゃ、自分の命を乗っけてるからな。だって、オレ達って、名前が無かったら見分けつかないし。それって、すげー悲しくねえ?」
チャオは、命を乗せている名前まで忘れてしまった自分は、一体なんだろうかと思ってしまった。カイルはその様子が見てとれた。
「だーかーら、考えるの!うーん、どんな名前にしよう…」
カイルは悩んでいるとき、チャオの顔を見た。そして、その目の不思議な色を見たとき、ぱっとひらめいた。
「よし!ヘーゼル!ヘーゼルにしよう!その目、すげえ綺麗な色だから!チャオでそんな目のやつ、はじめて見たし!それでいいか?」
チャオ、もとい、へーゼルは嬉しそうにうなずいた。