第一章 一話
雨が降っている。
冷たい 暗くて 寒い そして
寂しい。
Lost Memory 第一章 一話 夜のチャオシティ
チャオの世界はガーデンという狭い空間から開放され、チャオ達が自由に交流できる場ができた。そこはもう現実の人間たちの世界とは別の世界のように発達し、人間の手が行き届かないところもあった。そして最近、自分のチャオがいなくなるという事件が発生していた。
一匹のチャオが夜のチャオシティを走っていた。チャオシティとはチャオの世界で一番大きな街であり、人間の世界と交信できる唯一の街だ。
「くっそー!天気予報め!雨は降らないって言ってたくせに、きっちり外れてるし!」
もう最悪!とかグチリながら、雨の夜道を走るチャオの手には、チャオの実や、きのこなどが大量に抱えられている。家に帰る途中なのだろう。
それはともかく、雨の日の道は滑りやすい。案の定というか、やはりというか、走っているチャオは、転んだ。
頬に雨で濡れた冷たいコンクリートの感触を感じ、チャオは少しだけ泣きたくなった。恥ずかしすぎる。誰も見ていなかったことがせめてもの救いだろう。
「…ほんとに最悪…うぅ…情けねえ~」
派手にすっ転んだせいで、荷物は散らばり、雨の雫を浴びている。チャオは軽く自己嫌悪に陥りながらも、それを必死に集め、拾ってゆく。
すると、ふと目の端に、倒れている人影ならぬチャオ影をみつけた。
「え!ちょ、ちょっとおい!大丈夫か?!」
すぐさま駆け寄り、声をかけるも、倒れているチャオは目を覚まさない。
「オレにどうしろってんだ~?おーい、お願いだから起きてくれ!」
しかし、目は覚めない。チャオは悩んだ。倒れているチャオを、しかも雨の夜道に放ったまま帰れるほど、このチャオは図太くなかった。
仕方ないので、チャオは大量の荷物+倒れているチャオを引きずりながら家路についた。