その1
聖誕祭まであと数日と迫った、ステーションスクエアの一角のマンションの一室。
【エルファ】「ふー。」
コーヒーを飲みつつのんびり休憩中なのはヒーローヒコウの眼鏡っ娘、エルファ。
そこに、カタン、と音がした。
どうやら、郵便受けに郵便が届いたらしい。
どれどれ、と彼女がドアの郵便受けをのぞいてみると、そこには1通の封筒が入っていた。差出人は———
【エルファ】「リネージュ財団総裁、ルーティア=リネージュ…」
≪Lost Decade Chronicle≫
中身はこんな感じ。
『やっほー!エルちゃん元気にしてるー?
今度の12月23日に、チャオ10周年記念パーティーをウチのホテルの大広間でやるから、絶対来てね☆ ルーティア=リネージュ』
【エルファ】「招待状、ですか…」
もちろんこんなお誘いを断る訳にはいかないし、そもそもこの日は絶対に空けてある。彼女は手帳を開くと、カレンダーにメモを書き加えた。
書き終わってメモを閉じた、その時。
♪もってっけ~!流星散らしてデイト…♪
どこかで聞いたような着うたが流れる。テーブルの上のケータイを取り、電話を受けようとするところで、その番号に驚いた。
【エルファ】「こ、これは…」
電話してきた人物は…この人。
【ルーティア】『やっほー!封筒届いた?』
【エルファ】「ええ、たった今…で、封筒を送ったところで電話なんて、どうされたのですか?」
【ルーティア】『そうそう、その件について相談なんだけどさ、パーティーを狙った犯行予告が来てるのよ!』
【エルファ】「犯行予告…?」
【ルーティア】『うん、なんか爆破するとかなんとか…警備体制には心配ないんだけど、一応調べるの、手伝ってくれる?』
【エルファ】「ええ、分かりました。」
【ルーティア】『とりあえず、明日のお昼に本部ビルにお願い!詳しくはそこで説明するから!』
とまぁ、こんなやり取りの後、電話を切った。
【エルファ】「さて…久しぶりに大騒ぎになりそうな気がします…」
そうつぶやきながら、再びコーヒーを一杯。
===
さて、翌日のお昼、リネージュ財団の本部ビル。
【エルファ】「ここに来るのも久しぶりですね…」
自動ドアが開き、中に入る。
受付の女性がエルファの姿を見ると、すぐに立ち上がり、こちらにやってきた。
【女性】「エルファ様ですね、こちらへどうぞ。総裁がお待ちです。」
彼女の案内でエレベーターを上がり、着いたのは、最上階の総裁室。
【ルーティア】「ひさしぶりーっ!」
【エルファ】「お久しぶりです。」
軽く挨拶を済ませていると、扉が開いて、後から入ってくる人が。
【神楽坂】「しっかし、まさかただの高校生が総裁室に入れるって…」
【川島】「あ!総裁、お久しぶりです!」
神楽坂啓と、川島涼子。パートナーのチャオがいるはずの2人だが、今日はいない。
【ルーティア】「ひさしぶりー!ルーティアでいいよ、あたしのことは。」
【エルファ】「その制服は、確か…チャトル大付高の2年生?」
【ルーティア】「紹介するね、こちらが友達のエルファさん。
で、この2人があたしの頼れる後輩、こちら神楽坂くんで、こっちが川島さん!」
【神楽坂】「あ、どうも…」
【川島】「頼れるだなんて、そんな…」
軽く、お互いに挨拶を済ませる。
【ルーティア】「そういえば、パートナーの2匹はどうしたの?」
【神楽坂】「作者が『あまりキャラを出しすぎると収拾がつかなくなるから』とストップを…じゃなくって、今日は近所でチャオだけのお祭りがあるんですよ。」
【川島】「一応原作が完結してから2年半経ってるし知らない&忘れてる読者も…じゃなくって、つまりそういうことで今回はお休み。」
【ルーティア】「そ、そうなんだ…」
【川島】「その代わり、って訳じゃないけど、もう1人呼んでもいいかな?」
すると川島は一旦部屋の外に出ると、私服の女の子を引っ張るように部屋の中へ連れてきた。
【木更津】「な、なんなんですか…?ここ、どこですか…?
何であたし連れてこられたんですか…?」
あっけにとられる彼女をよそに、川島は部屋の鍵を閉める。
【木更津】「なな、何で、かか、鍵を閉めるんですか!?一体何を」
【川島】「黙りなさい。」
【木更津】「ひぃっ!?」
一喝する川島、うろたえる木更津。
【神楽坂】「またしても美少女だった…じゃなくって、パロディはいい加減そこまでにしとけよ…
(つーか未来人じゃなくて異世界人だし…)」
【川島】「仕方無いわねー…」
川島は不機嫌そうに鍵を元に戻す。
【木更津】「えっと、こ、こんにちは!」
改めて挨拶した女の子が、木更津香織。こう見えても異世界の魔術師である。しかもかなり強い。
ちなみに彼女にもパートナーのチャオがいるが、神楽坂・川島のパートナーと同じ理由でお休み。
【ルーティア】「あー、ひっさしぶりー!」
【木更津】「え、えっと…どちら様でしたっけ!?」
一瞬凍りつく総裁室。確かに木更津とルーティア嬢は原作で面識があるはずなのだが…本当に忘れてしまったらしい。
【川島】「え、えっと、最初にこっちに来たときの、あの…」
川島が必死にフォロー。
【木更津】「うーん、いたようないなかったような…」
【ルーティア】「いいのいいの!これから覚えればいいだけだから、ね?よろしく!」
そんな状況にも、裏のない笑顔で挨拶するルーティア嬢。
【エルファ】(そういえば、彼女には負の感情が存在しないのでしたね…『裏』がいますから…)
さて、面子が揃ったところで、本題。
【ルーティア】「本題だけども…チャオ10周年記念パーティーに爆破予告が来てるってのは話したよね?」
【エルファ】「ええ、それは…」
そんな中、何やらひそひそ話を始める2人。
【川島】(って、連載終了から2年半経ってるのにあたしらまだ高2っておかしくない!?確かに歳は取りたくないけど!)
【神楽坂】(リネージュ先輩なんて初登場からほぼ10年経ってるのにまだ18歳ですよ!一体どうなってるんですかこの世界は!)
【川島】(これはやっぱり…)
【神楽坂】(ドラえもん時空、またの名をサザエさん時空…っ!!)
【川島】(ってことはあたしらは永遠の17歳!どこぞの声優もびっくりね!)
【神楽坂】(数年前の作者が無理矢理時間を進めさせて整合性を取ろうとしたのがバカみたいだな…最初からこうすりゃ良かったのに…)
【川島】(しーっ!言っちゃだめ!聞こえるわよ!)
【ルーティア】「あ、あのー…いいかしら?」
【2人】「あ、はい!」
…話を戻して。
【ルーティア】「で、これが送られてきた脅迫ビデオなんだけど…」
と、ビデオテープをセットする。
【エルファ】「い、今時VHSですか!?」
【川島】「ほ、ほら!98年当時はDVDとか無かったから!」
【神楽坂】「気がつけばブルーレイ…時代が変わったなぁと作者が嘆いてますよ…ってそういう問題じゃねぇだろ!」
【川島】「ここまでやるならベータでも送りつけてくれればもっと面白いことになったのに…」
【神楽坂】「いや、今の読者はベータとか本気で分からない人いそうだから!」
外野が騒いでいるうちに、ルーティア嬢が再生ボタンをON。
映った画像は、何やら覆面をしたチャオ。
【覆面チャオ】『これからお前たちにいいことを教えてやる…』
音声は加工されており、誰かを特定するのは不可能だ。
【覆面チャオ】『今年の12月23日…リネージュ財団所有の高級ホテルで行われるチャオ10周年記念パーティーを爆破する…
お前たちにこれを止めることは不可能だ…』
【神楽坂】「なんだってこんなことを…」
【ルーティア】「ビックプロジェクトだから、今更中止するのも難しいわ…」
…だが、ここからなんだかおかしくなる。
【覆面チャオ】『どーーーーーしてもこの私を止めたいのならば、えーっと、なんだっけ?
と、とにかく覚悟するのじゃー!だーっはっはっは!!!』
で、ピンと来た3人。
【神楽坂】「こ、この口調と独特の高笑い…」
【川島】「これは恐らく…」
【ルーティア】「っていうかほぼ100%…」
【3人】「プロフェッサー・ムコージマ!!!」
またの名を向島きょうじゅ。週チャオ史上最凶のマッドサイエンティスト。
【神楽坂】「また俺たちまで面倒に巻き込みやがって…」
【川島】「あーもう、結局いつものパターンじゃない!」
【ルーティア】「ま、まぁ、いつものパターンって分かれば、逆にやりやすいし、大丈夫かな?」
と、gdgdになりかけたその時、ビデオから最後のメッセージが。
【きょうじゅ】『なお、このビデオは再生が終了すると自動的に…』
【ルーティア】「!?」
【エルファ】「まさか…爆発!?」
【川島】「香織ちゃん、下がって!」
訳も分からず数歩さがる木更津、身構える他の3人と1匹。
【きょうじゅ】『…巻き戻される。』
ガチャ。
ウイイィィィィン………
【おぉる】「だあああああっ!!」
【神楽坂】「な、なんというか…巻き戻すっていう発想がまさに90年代というか…」
とにかく、やるべきことは分かったので、改めて作戦会議を開くことにした。
<続く>