12話

そっとアオイはドアに身体を密着させ、中の気配を確かめる。
誰かいるのか?それとも留守か?
神経を研ぎ澄ませ目を閉じ集中させる。
すると・・・うっすらとだが部屋の中に誰かがいるのが【みえた】。
本当にうっすら。何をしているのかも部屋の間取りさえもわからなかったが・・・
この中には人が居る!
何をしているのかまでは【みえなかった】が充分だ。
アオイはそっとドアノブに手をかけてゆっくりと回した。
—鍵が掛かってない? 嘘でしょ・・・無用心にも程があるわよ!
声には出さず、ドアをゆっくりと押した。

内装は少し広めのワンルーム。その一部屋というのは入って真っ直ぐの所に在った。
玄関から中を全て一望できる訳ではないが、ほぼわかってしまう。
彼女はその廊下を難なく通過した。
そして部屋に一歩踏み入れた瞬間。

ガタ ガタガタッ
と不審な物音が聞こえてくる。
どこから? 何の音?
思わずこの狭い部屋を見渡した。内装は小さな丸い机と、テレビだけ。
他には家具らしき家具なんて見当たりはしない。
そして今更になってこの内装は日本の部屋である事にも気がつく。
また・・・
あの不審な音はあの押入れの向こうからだという事にも気が付いた。

—まさか・・・あんなとこに隠れるか?
と疑問は浮かぶがそれ以外に隠れられそうな場所はないという証拠もある。
—開けてみるしかないか・・・。
さっきから想定外の出来事続きで心臓の音がうるさい位に激しい。
それを落ち着かせる為、軽く呼吸を整えて・・・・
渾身の力で横にスライドさせた。

「・・・あれ? ケータイ?」
そこにあったのは綺麗に折りたたまれた布団と枕。
不自然な位置に置いてあった携帯電話。
もしかして物音の原因は・・・・これ?
ケータイから手を離そうとしたその時であった。
後ろから不意にバランスを崩され派手にこける。
一瞬にして視界が天井にへと切り替わった。

「動くな」
今、アオイの頭上には銃口が向けられていた。

—嘘 ってかいつの間に・・・・・
もうこうなってしまえば身動き一つとれやしない。
下手をしたら自分の命さえ奪われるかもしれない 
今、アオイを乱暴にねじ伏せている男はそうだと記されていた。
このまま黙っているわけにはいかない。
彼女は男の問いかけに応じることなく着々と打開策を考えるのであった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第331号
ページ番号
16 / 31
この作品について
タイトル
Lord
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第319号
最終掲載
2009年5月12日
連載期間
約1年17日