11話
半強制的にオフィスを追い出されてしまった。
どうもすぐ仕事場に戻る様な雰囲気ではない。あれよりもまたいっそう冷たい視線を浴び続けなければならなくなるのだから。
—いいかげん覚悟を決めよ・・・。
そう自分に言い聞かせてはその紙切れを視線に合わせる。
元はといえばこのプリントの集合体が私に襲い掛かるからこうなったわけで。
・・・・どうもまだ腑に落ちないようね。
と自分の性格というものを再認識させられた。
そういえばよく言われる・・・。
「あなたは本当にわがままね~」
「だまっていれば可愛らしいのに・・・女の子は性格も問われるのよ?」
「あとは正直になりなさいよ。嘘を付いてばかりなんだから・・・。」
「ねっ? アオイさん」
回想なのに本当に自分の名前を呼ばれているようで少しドキッとした。
亜麻色の髪を揺らす少女 アオイは思わず後ろを振り返る。
その時だった。
大きく弧を描きながら飛んでくる白を思わず手で取った。
—これは・・・私の携帯・・・。
どこから投げたのか。もうわかりきっている。
見上げてみれば答えはもうあそこにあった。
「いってらっしゃいな アオイさん!」
笑顔と激励。 アオイはしっかりと受け取ったのであった。
そしてそれから十数分後・・・。
彼女は狭い車内のシートの上にいた。
ひっきりなしに座席は揺れ、道にあわせて遠心力が身体に加わる。
しかしそんなことはお構いなしにアオイは携帯のTVに聞き入っていた。
『一昨日、国境沿いのロッキー山脈で発生した山火事は今だ消火活動が続いており・・・』
—こんな調子でTVは語ってくる。
それを私は呆然と聞き流す。だってあまりに単調なリズムだから。
「何かおもしろい事でもないかな?」心の中の口癖はいつもこれ。
「だってつまんないんだもん」 「もっと刺激が欲しい。」
未知なる物を追い求める事でも・・・
常に危険と隣り合わせの冒険でも・・・
胸焦がす様な大恋愛でも・・・
何でもいいから・・・・。
「お嬢ちゃん!ここいらかい?」
「へっ?ちょ・・・ちょっと待って!・・・・そこじゃなくて次のアパートまで。」
もう景色は乗り込んだ場所とは随分変わっていた。
こんな古くてオマケに煉瓦の壁は崩れかけてて、ストリートギャングとでも鉢合わせそうな場所。
実際にこんな所に来るのは初めてだ。
珍しい景色にアオイは車の中であっちこっちを見渡し世話しなく動き回っていた。
「彼氏の所でも行くのかい?」
「あっ・・・そんなんじゃないですよ!」
「そうかい?随分と楽しそうだからついそうかと・・・」
「彼氏かぁ・・・」
「まぁここいらは治安も悪いから気をつけなよ?お嬢ちゃんみたいな可愛い子がこんな所うろついていたら・・・」
「いたら・・・?」
「餓えた男共にパックリ食われちまう。」
—パックリかぁ・・・・
まぁ相手が相手なら別にそれもいいけど・・・・
適当に愛想笑いを作ってその場は過ごした。
お金を払って車を降りて、聳え立つボロボロアパートを正面に捕らえた。
四階建て程度の小さなアパート、その階の一番下、一番端っこの部屋。
紙切れが指示している場所。
私は難なくそのドアの前にまでたどり着く。
「この中を調べたら・・・いいのね?」