~ライトカオス様・特別編~
――私はライトカオス。この村の長である。皆からは長として慕われ、親として慕われ、兄として慕われ。皆私を家族のように慕ってくれている。そして私も皆を慕っている。
――最近この村は、にわかに慌しくなった。
――西に東に、北へ南へ。小さな村の中を、チャオ達があちらこちらへ駆け回る。実は今、村はとある準備に追われているのだ。何のための準備かと言うと…
「ライトカオス様~」
「ライトカオス様~」
――キミたちはチャルルさんの所のチャロロ君と、チャランさんの所のチャレンちゃん。なんだい?
「おたんじょうかい、今日だよね~」
「ね~」
――そう、何のための準備をしているのかと言うと。今夜行われる、私の誕生を記念したパーティの準備である。
――毎年毎年、私の誕生日を村中で祝ってくれるのである。まったくもって、有難いことである。
「楽しみだね~」
「ね~」
――そうだね、とっても楽しみだよ。おいしい料理もたくさん出てくるよ。
「わーい!たくさん食べる~!」
「食べる~!」
――無邪気にはしゃぐ子供たちの背後に、私はチャランさんの姿を見た。少々、眉間にしわがよっている。
「食べるのは、ちゃんと手伝いをしてからだよ!」
――背後からの突然の声に、二人は猛烈にビックリしたようだ。
「まったく、こんなところで油を売って。ほら、二人でお皿を並べとくれ」
「は~い」
「は~い」
――私も何か手伝おうか。
「とんでもない、今日の主役はライトカオス様なんですから!時間までゆっくりしていてください」
――そう言ってチャランさんは、チャロロ君とチャレンちゃんを引っ張って行ってしまった。
――ふむ…少々悪い気もするが、今日はお言葉に甘えさせていただくとしよう。
――パーティーまであと数時間…。我ながら少々大人気ない気がするが、童心に返ったような気分だ。
――いまからとても、楽しみである。
…
…
「あ、ライトカオス様ポヨがハートマークになってる。またえっちなコト考えてるのかな?」
…
…
――あたりは夕闇に包まれ始めた。
――村の広場には、木で作られたイスやテーブルが並び、テーブルの上には真っ白なお皿に盛り付けられたおいしそうな料理が所狭しと並べられている。
――たいまつの炎が揺らめく中、壇上の私の挨拶を皆静かに待っている。木々の葉が擦れる音が静かなメロディーを奏でる中、私は口を開いた。
――皆。今日は私のために……
「すごーい!あのお魚大っきいー!」
「大っきいー!」
「『あの魚類、丸焼きがいいかな?塩焼き?刺身かなぁ?』」
「丸焼きー!」
――クスクスと、広場に小さな笑い声が徐々に浸透していく中、チャルルさんがチャロロ君の、チャランさんがチャレンちゃんの頭を、それぞれぺしっ、とはたいた。
――堅苦しい挨拶はいらなかったようだな。皆、今日は心行くまで、思う存分楽しみ、盛り上がってくれ!
――私がグラスを軽く掲げると同時に、村の皆も同じようにグラスを掲げる。そしていよいよ、パーティーは始まった。
――広場には、あちらこちらから、皆が楽しそうに話す声が聞こえる。
…
…
「おい、すげぇぞ!アレ全部『まるごと冷凍みかん』だ!」
「4個入りだぜ4個入り!」
…
…
「なぁ、お前あの映画見た?『となりのヘドロ』」
「見たよ。見たけど、食ってる時に言うなよ……」
…
…
「てめぇっ!それは俺のヤシの実だ、返せっ!」
「うるせぇ、早い者勝ちだ!『おめぇに食わせるヤシの実はねぇっ!』」
…
…
「あら、おいしそうなから揚げね。少しレモンをしぼると、もっとおいしくなるわよ」
「『レモンは嫌チャオ!体が黄色くなっちゃうチャオ!』」
…
…
「ライトカオス様~、ビールって何で泡立つの?」
――え、そ、それはね……。
「わかんないんだ」
『ライトカオスに○○のダメージ!』
…
…
「う~ん、スパゲッティはカルボナーラが一番チャオ」
「はんっ。『トミーのミートソース』の良さがわからないなんて、まだまだお子様チャオね」
…
…
「よぅ、『景気はどうだい?』」
「え、ケーキあるの?どこ?」
…
…
「なぁ、二人で抜け出そうぜ。誰も来ない、二人きりになれる場所を知ってる…」
「『いやん』」
…
…
――パーティーが始まってしばらく経った。村の皆が、私にプレゼントを渡してくれるそうだ。
「ライトカオス様~、プレゼントあげる~」
「あげる~」
――チャロロ君に、チャレンちゃん。ありがとう、何をくれるのかな。
「開けてからのお楽しみだよ~!」
「お楽しみ~!」
――私は二人から、一つの箱を受け取った。いったい何が入っているんだろう。
――私は期待に胸を膨らませ、箱を開けた。
ビヨヨ~ン!
――!
「わ~い♪ひっかかった~。びっくりした~?」
「した~?」
――……。
「ライトカオス様~?」
「ライトカオス様~?」
――…ははは。この私が、そう何度も同じ手に引っかかるわけないだろう。全然驚かないよ。
「うそついてる~」
「うそついてる~」
――何故そう思うんだい?
「だって、」
「だって、」
「頭のおてんとさまびっくりマークになってるもーん」
――………ぐすん。