交差点(リメイク版)

駅前の排気ガスがこもる交差点。
喫茶店に、そのコはいた。
そして、俺と一緒に歩いている「こいつ」。
面倒見が良い奴。いや、それともただお節介なのか…。

「あのコはチャオが好きなんだってさ。」
「だからって、こんなにでかいのを・・・。」
「がんばって、渡してくるのよっ。」

彼女はぬいぐるみを俺に手渡して上目遣いで見た。
きっと意識なんてしていないだろう。
俺はどうせ友達止まりなんだろう。

「こんな」表情で「こんな」性格。
でも、それが「こいつ」なわけだ。



結局、今回も彼女に相談したのがまずかった。
この水玉のぬいぐるみで小遣いは全額パー。
次小遣いが貰えるのは一週間後。
それまでどう食いつなげよう?

・・・でも、実はこのチャオの人形を探したとき、
俺は一番幸せだったのかもしれない。

いろんな店をこいつと二人で探し歩いた。
そして、ある店でこのぬいぐるみがちょこんと座っていたとき、
こいつは満面の笑みで喜んだ。
今、向かいの喫茶店で話をして笑い転げている笑顔なんかより、
よっぽど心に来るモノがあった。

俺は、内心で、叫んだ。



ホントはあのコなんてどうでも良い。
このチャオかって、本当は、
本当は・・・!



ざわ・・・。
俺は雑踏が一斉に動き出したのを肌で感じた。

信号は青になっている。

move on,move on

そうせかされ、俺は歩き出した。

もう、彼女は着いてこないだろう。
それはこの交差点だけじゃない。
それを遙かに越えた、俺の「理想」という道にも・・・。



・・・悪あがきくらいはしても良いよな?

反対の歩道まで行き着くと、
俺は元の歩道にいた「こいつ」に
チャオの人形を投げつけた。

水色の星が、放物線を描き、
道行く人々の頭上を交差していく。

「こいつ」はあわてて飛んできた人形を
小さな体で必死にキャッチする。
俺はその行動を黙ってみていた。
かわいらしい、でも、もう届かない、その姿を。

「ちょ・・・なんで・・・。」

俺は何にも言わずに踵を返した。
やがて雑踏は俺の姿をかき消した。

交差点の信号は赤色になっていた。

stop,stop...


fin

この作品について
タイトル
交差点(リメイク版)
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第327号